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モフセンマフマルバフ『アフガニスタンの仏像……』:ごめんなさい、確かに「ヨハネスブルグ……」登場のものとはちがってました。

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ

  • 作者: モフセンマフマルバフ,Mohsen Makhmalbaf,武井みゆき,渡部良子
  • 出版社/メーカー: 現代企画室
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 単行本
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先日、宮内『ヨハネスブルグの天使たち』について書いたとき、その中に出てくるバーミヤン仏像破壊に関するコメントが、モフセンマフマルバフの『アフガニスタンの仏像……』の引き写しだと書いたところ、著者よりそうではないとの指摘をいただいた。

慌てて読み直したところ、確かに宮内の指摘通り。小説内で言われていることと、モフセンマフマルバフの本に書かれている主張とはちがっていた。大変失礼しました。申し訳ない。

アフガニスタンの天使たち』で書かれていたのは、アフガニスタンの仏像がタリバンに壊されたらみんな騒いだけれど、そのあしもとで仏教系(と書いてあったかな? モンゴロイド系だったかな? 宗教的にはシーア派イスラム教徒)のハザラ人たちが殺されてもみんなスルーした、世界の連中の対応は人間軽視で実に恥ずかしい、だから仏像はその国際社会の連中の偽善ぶりを恥じて自ら崩れた、というものだった。

それに対して本書に書かれているのは、ちょっとちがう。バーミヤンの仏像がタリバンに壊されたらみんな騒いだけれど、その足下にあるアフガニスタンの現状の悲惨さにはみんなまったく目を向けない。アフガニスタンは経済的にも立ち後れ、迷信がかった偏狭な宗教が幅をきかせ、部族間抗争ばかりにあけくれ、女性の権利は低く、教育水準も低く、あれもこれもとにかくひどい状況で、そのひどいアフガニスタンの状況を恥じて仏像は自ら崩れ落ちた、というのが主な主張となっている。

ということで、『天使たち』が本書の内容をそのまま使っているというのはまちがい。この本が出たのは(そしてぼくが読んだのは)10年以上前で、うろ覚えでした。

ちなみに、この本自体は非常にしっかりしたもので、アフガニスタンの現状の絶望的な状況をよく描いている。それに対して訳者が、その悲惨な状況の描写について、西洋的な価値観からの上から目線だと批判しているのは、ちょっと理解に苦しむところ。部族抗争はアイデンティティを維持してきたということだそうで、ブルカとかに代表される女性の抑圧も、訳者的には実は抑圧ではないことになるらしい。そしてそうしたものを肯定しつつアフガン難民についてよくないとか日本の対応はダメだとか……部族抗争とか低教育とか女性弾圧とかを肯定するのであれば、そこから出てくる悲惨な死や難民や殺し合いもまた肯定せざるを得ないはずだと思うんだけれど。まあ見方は人それぞれ。でも短くて読みやすいし、特にモフセンマフマルバフの映画を観た人なら是非読んでほしい……って、当然読んでるか。



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