柳下毅一郎の労作『ロデリック』@スラデックがしばらく前に出て、これはまあ義務として読まねばなるまいよ、と思っていて、やっと数日前にとりかかったところ。
ロデリック:(または若き機械の教育) (ストレンジ・フィクション)
- 作者: ジョン・スラデック,柳下毅一郎
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 単行本
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ぼくはスラデックのよい読者とはいえなくて、つまみ食い的には読んでるけどすごい強い印象があるわけではない。柳下が確か『蒸気駆動の少年』解説かなんかで書いてたけど、天才なのにその才能をすごくくだらないことに無駄遣いしている、という感じで、しかもその無駄の方向性がぼくとはちょっとちがって、くだらない中に重要な論点を隠すというよりは、とにかく無意味にくだらなくて、重要な論点とか批評的な観点は至る所にあるのに、それがなんかかみ合わないというか。
この『ロデリック』も、原著はすごく評判よくて、読もうと思いつつ読まずにいた……と思っていたんだけれど、今回邦訳を読み始めると、小ネタにやたらに既視感ある。大学の占星術講義とか、ユング経済学とか、アラブっぽい王さまの人権デモ隊虐殺とか、殺し屋が「中国人のジジイはカンフーやってるから先に殺さないと」と言うところとか。あれ、これって読んでたっけ?
なんか最初のほうだけ読んで読み切らなかったパターンかな?それにしては、円城塔が解説で挙げているような立派なネタの記憶はまったくなくて、いちばんくだらないところしか記憶にないのはとても悔しい感じ。肝心のロデリックくんについての記憶は一切ないんだよね。このまま読み進むうちに、なんかプチマドレーヌ体験みたいなのでいきなりこの本の全貌が記憶の中に浮上したりするのかも。
でもそれが、かつてアレクサンダー『時を超えた建設の道』のときみたいに「そうだ、これは読んであまりのダメさかげんのあまり怒って読んだことすら抑圧していたんだった~」ということにならないといいなあ。