ビグロー監督『ハート・ロッカー』:結構地味でムズい映画。

ハート・ロッカー [DVD]

ハート・ロッカー [DVD]

ハートブルーのビグローなので、なんか熱い/暑い男のドラマかと思ったら……唐突に始まって淡々と進んで、伏線めいたものもドラマ的な盛り上がりもないまま思わせぶりな回想が入って突然終わってしまったよ。ベッカムくんのエピソードとか、その家に侵入したときのエピソードとか、不条理と空虚感があと一歩でかつてのアントニオーニ映画みたいな感じで、ラストは無人のバグダッドの街路をひたすら写し続けるんじゃないかと思ったくらい。

アカデミー賞ではどこらへんが評価されたわけ? こうした無為にも思える日常がイラク派遣兵たちの現状を見事に描き出しているということなのかしら。

追記

町山評によれば、主人公たちはドンパチやる戦闘兵ではなく、爆弾解除で無差別テロから一般人を救う気高い人々なのだ、という話。ベッカムくん関連のエピソードは主人公が地元の人々のことを気に掛けていることを示すもので、全体の話は無差別テロをやる連中に対する怒りと、ひいてはそれを引き起こした戦争への批判なんだ、ということになるんだが。そういう解釈もできるとは思う一方で、戦闘する兵と工兵との間の細かいちがいをそこまで深読みできるものだろうか? ビデオ屋のおやじを脅した話とか、結局ひとちがいだった部分とか、あんまりそれがすっきりしてないように思う。



クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.