スタインバーグ『ビスマルク』:うーん、パス

ビスマルク(上)

ビスマルク(上)

うーん、ちょっとこれは手を出したのが無謀だった。ビスマルクって、鉄血宰相とかドイツをまとめたとか伊藤博文のあこがれとか、一応軽くは知っているんだが、細かいことも知らないし、当時の時代背景もきちんとは知らないんだよね。読んでいるうちにわかってくるだろうとたかをくくっていたんだけれど、でもあんまりわからないし、初耳な王さまの名前とかあれやこれやが乱舞して、ぼくには荷がかちすぎる。

冒頭のところで、ビスマルクについて、すごい思想や理念を掲げたわけでもなく、民衆の支持もあまりなく、結局ビスマルクがあれだけの力を発揮したのは、王さまたちに気に入られていたからなんだ、と著者は主張する。ふーむ。だったら伝記の中心は、ビスマルクがいかにして王さまたちに取り入ったか、という阿諛追従術の解析にあるのかな、とぼくは思ってしまう。

でも著者は、それがビスマルクの人間的な魅力のせいということにして、それを示すために私生活の細部みたいなものに力を入れる。ぼくはそれがちょっと気忙しい。ビスマルクの学生時代のご乱行とか、二十歳過ぎの人妻が好きで五十近くなってもずいぶん真剣に恋愛ごっこをしていたとか、興味深くないわけではないんだけれど。そして、ちょっとした役人からすぐ外交官になって、当時のプロイセンの力関係の中ではずいぶん煙たがられたけれど、いつのまにか王さまに接近してシュルシュルっと首相になっている。えーと、著者の主張からすると、なんでそこでそんなに簡単に王さまに取り入ることができたんですか、というのがこの伝記の要点であるべきではないでしょうか? でもそのあたり、あまり書かれていない。王さまどもがとにかく無能でバカだった、というのはわかった。でもそれだけだと、必要条件ではあっても十分条件ではない。

ぼくがもうちょっと背景知識を持っていて、ビスマルクの概要を把握していたら、もうちょっと楽しめたのかもしれない。そういう人だとこうした雑多な人間関係は非常に魅力的なのかもしれない。でも、ぼくのいまの状態だと全体像が不明確なままトリビアばかりが入ってくるので、とってもつらい。ビスマルクについて無理して勉強したい気もないので、いまはパス。いずれ何かでもう少し予備知識が増えたら再挑戦しませう。



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