Sulloway Freud: Biologist of the Mind: うーん、こんなのが問題になるほどフロイト業界ってアレなのか?!(訂正:アレ「だった」のか?!)

Freud, Biologist of the Mind: Beyond the Psychoanalytic Legend

Freud, Biologist of the Mind: Beyond the Psychoanalytic Legend

家の本棚に10年以上転がっていた積ん読の消化。一時、Dewdney Yes, We Have No Neutrons: An Eye-Opening Tour through the Twists and Turns of Bad Science を読んで、フロイトのいんちきぶりに興味を持ったときに買って、分厚いんでずーっとそれ以来寝かしてあったのだ。
基本的な内容は、フロイト説というのが、フロイトがゼロから編み出した完全オリジナルな理論なんかではない、というもの。
フロイト自身(そしてその後のフロイト信者ども)の説は、フロイトが男性ヒステリーを発見し、小児性欲を発見し、幼児期体験があれこれで無意識で夢判断でと言うのを見つけ、それはそのたびごとに学会や当時の心理学の業界から猛反発をくらったが、それにくじけずフロイトは己の説を確立したのだ、という。
でも、実際に見てみると、フロイトの説は男性ヒステリーも小児性欲も、ちゃんと先人がいてフロイトはそれを発展させただけだし、別に業界も特に反発なんかしてないそうな。で、フロイトは生物学、特に進化論的な発想に多くを負っていて、系譜的にはダーウィン進化論を中途半端に援用してラマルク進化論をベースにしてしまったがために、フロイト理論もラマルク的な歪みが出てしまっている、という話。フロイト自身は、心理学の生物学的な基礎とかいう話をすごく嫌ったけれど、でも実際は思いっきり基礎になってるよ、ということ。

で、なぜそれとはちがう話が通念になっているかというと、フロイトが自意識過剰なやつだったから。なんでもフロイトは、二度にわたって昔の手記とかメモとか手紙とかを全部処分して、自分の思想的な過去を探られないようにしてるので、これまでのフロイト研究ではフロイトが自伝とかで書いてることを鵜呑みにするのが通例だったこと。で、フロイトは自分が思想的な恩義を受けている人間との決別をすべて、自分のほうが相手の見解に合意できずに袂を分かったような書き方をしてるんだが、実際は概ね逆で、相手がフロイトに我慢ならずにハブにしてるケースがほとんど。

ふむふむ、と思って読んでいって、なかなか楽しいのだが、一方でやたらに分厚い。それと途中の話はかなり専門的。そして何よりフロイトについての通説というのを知らない身としては、フロイトはまったく独力でフロイト心理学を確立して、何の影響も受けていないのだ、と言われているとか読んでも「そんなわけないじゃん!」と思ってしまい、そんなことを検証して批判するのにこんなに分厚いページ数をかける必要性があったのか、というのがわからん。

さらに現在のフロイト理解ってどうなってるのか、というのもあんまり知らない。これ、初版が1980年の本なので、もはや本書の内容は常識なのか、それともまだフロイト信者には受け容れられてないのか? そこらへんがわからないので、これを今読むのって意味あるのかもよくわからない。ということで、うーん。ま、一応消化しましたってことで。

追記

稲葉振一郎殿曰く「大昔の本ですね」。ううう、バッサリ。



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