先日、貧乏人への施しとトリクルダウン実証実践の一環といたしまして、コーヒーによる汚損が見られたピケティ『21世紀の資本』をこのワタクシめが鷹揚にも底辺貧困層に恵んでやったのは皆様も記憶に新しいところかと存じます。おかげさまをもちまして当該企画は、受益者の皆様にはたいへん好評をもって迎えられました。ひいては、我が国におけるピケティの受容と理解にも大きく貢献したものと自負しております。
しかしながら、その後内部調査の結果として、当該コーヒートリクルダウンの汚損ピケティ本に異物混入と偽装の事実が明らかとなりました。
経緯:
コーヒーがトリクルダウンしたのは事実であったが、カバーおよび帯に使用された紙の撥水性がきわめて高く、美しい汚損が生じていないケースが存在した。この問題について現場では、コーヒーのいれ直しや種類の検討による再加工といった適切な処理を行わず、こうした瑕疵の存在を隠蔽したうえ、独断により、コーヒーよりも発色の優れていた紅茶やドクダミ茶を使用し、表紙およびカバーの染みの色合いを強調し、それがあたかもコーヒーによるものであるかのように偽装して出荷を行った。
お詫び:
コーヒーの染みがついた本を期待しておられた各位におかれましてはお詫びのしようもございません。せっかくの染みがコーヒーではなく紅茶やドクダミ茶であると判明したことで、裏切られたと感じる方も多いのではないかと思慮する次第です。染みに加水してコーヒーの再抽出を試みた方もいるかと存じますが、おそらく本来のコーヒーの味が得られなかった方もいるのではないでしょうか。そのお怒り、悲しみは計り知れぬものであろうと思慮する次第です。伏してお詫びする次第です。
対策:
現在、こうした不祥事の再発を防ぐために全面的な調査を行っているところです。現時点では、まず直接の担当者について家内雑用負担の積み増しをはじめとする処分を行っております。さらに工程見直しを通じ、コーヒーだけでも強い染みができるような原材料選びと前処理を行い、こうした異物混入と偽装が今後は生じないように方策を講じております。
また今回のトリクルダウン版ピケティ当選者様に対しては、お申し出があり次第、当該偽装商品を正しいコーヒーのみによる汚損本に交換させていただきたく存じます。希望者は当方までご連絡いただければ幸いです。
このたびは、当方の不手際と監督不行き届きによりこうした不祥事が生じてしまったことを心よりお詫びいたします。この不始末で、せっかく我が国でも盛り上がりつつあるピケティブーム、および格差に対する関心にもまた水、もとい紅茶やドクダミ茶を差す結果とならないことを、心から願うばかりです。
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