アメージング・スパイダーマン:3Dで観ないとあまり意味ない。脚本は前のやつに数段劣るけれど、ふつうによくできている。


最近はあらゆる映画を、飛行機の中でやるかどうかで判断するので、あまり映画館に行かなくなっているけれど、これは観た! 観るなら、まず3Dで観るのをお奨め。そうでないとあまり付加価値なし。

さて映画そのものだが、何をおいてもまず……

この騒動すべて、そもそもオスコープ社のセキュリティが1から10まで完全なクズなせいでしかない。いやそういう突っ込みは野暮とは知りつつ、部外者が身元確認せずに、ほいほい最高機密のあるところまで見学に入れ込めるわ。その中で、トップシークレットの部屋に入るのに、バイオメトリクスICカードも使わないで高校生がのこのこ入れるわ、最後でもインターンの高校生がこれまたボタン一つで抗生物質をつくっちまうわ。

だいたいこの会社、BSL4級の遺伝子操作どころじゃないすさまじいことやってる施設を、そもそもマンハッタンのどまんなかに作るな! 市もそんなもの許可すんな! しかも女の子がそれをホイホイいじって持ち出せるし。この会社がちゃんとしてれば(うちの勤務先程度のセキュリティでもあれば)、スパイダーマンもできず、トカゲ人間も生まれず、万事安泰だろうに。

あと、あのクモの糸は、このバージョンだと体内から分泌されるわけではなく、できあいのクモの糸液をパーカーくんが自作の装置からぴゅんぴゅん発射することになってるんだけど、そのクモの糸の原料はどっから持ってきてるんだよ。これもこの映画だと、オスコープ社が作ってることになっているんだが、それを一度はくすねるにしたって、後はどうすんだという……映画全体で少なく見積もっても20フィートコンテナ一個分くらいのクモの巣原液が要るし、とても研究室にあるサンプル程度では足りないと思うぞ。

というようなところに目をつぶるなら、がんばって3Dはうまく使っていたと思う。おじさんの死ぬ前やりとりとか薄いし、あちこちで前の With great power comes great responsibility に匹敵する名台詞をいろいろ作ろうとしつつ、決めせりふがないし、死に際の涙の約束しときながら「でも破っちゃってもいいよねー」って、なんじゃそりゃ、とは思うし、脚本やストーリー面では前のやつに数段劣るけれど、比べなければいいできだと思う。



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