- 作者: Benito Mussolini
- 出版社/メーカー: Howard Fertig
- 発売日: 2006/09/01
- メディア: ペーパーバック
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前にムッソリーニの伝記を書評したとき、いくつかムッソリーニ関係の本を読んだんだけど、見てみるとムッソリーニ自身のファシズム論って翻訳がないみたいなのね(昭和19年に出た翻訳が国会図書館にはある。「国立国会図書館デジタルコレクション - ファッシズモ教義」[関裕美P]∵ごま∴氏にご教示いただいた。ありがとうございます!)。ヒトラー『我が闘争』の訳さえあるのに。みんないろんな人を気安くファシスト呼ばわりするけど、実はみんな本当のファシズムってどういう主張だったのか知らないで、聞きかじりでモノ言ってるだけじゃん。情けない連中だね。
というわけで知ったかな情けない乞食どもに恵むシリーズ、第何弾か忘れたけど、ムッソリーニ当人のファシズム論です。短いので勉強しなさいな。
ベニート・ムッソリーニ他『ファシズム:そのドクトリンと制度』 http://genpaku.org/mussolini/mussolinifascismj.pdf(pdf 150kb)
どうだろう、実際のファシズムが世間の通念とはまったくちがうのがわか……ったりはしない。世間的なファシズム理解とそんなにちがうわけじゃない、というより世間的なイメージよりもっとひどいかも。
豆知識だが、本書の第1章を書いたのはムッソリーニではなく、ジョヴァンニ・ジェンティーレという哲学者かなんかとのこと。また、これを英訳したのがだれなのかは不明。ファシスト党の公式刊行物として出たもの。
内容的にはとても楽しい。短いしスラスラ読めるよ。いまの政治家の公式発言(だけでなく、評論家たちの駄文)でも、民主主義とか人権とかにリップサービスするのがアレだし、もっとモガモガ要領を得ない言い方をするのが基本なので、ここまで平然とすべて否定されるとかえって新鮮な面もある。たぶん、当時人気を博したのもそういう部分があるんじゃないかな。
ただしそこで実際に言われていることはかなり無内容。国家がすげー、国家エライって言うんだけど、なんで? どうして? 説明まったくありません。たたみかけるようにフレーズを重ねてインパクトを出そうとするけど、通して読むとあんまり論理的につながってない部分も結構あって、訳すの面倒でした。
でも人の多くは口調や単語の出現回数だけに反応するから、中身のなさはあまり大きなハンデにはならない。八紘一宇に心酔してた馬鹿な国会議員とかは、こういうの読んだらすぐファシズム万歳とか言い出しそう。が、それはさておき、ファシズムというのは、こういうドクトリンに基づくものなんですねー。Now you know.