タイミングがあわずに採り上げられないのがとても残念。今後日本のインフラ更新や維持のためにすべきことを具体的にまとめたよい本。

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

これはとてもよい本だし重要なテーマを扱っているので、スペースやタイミング的な問題で採り上げられないのは残念。上下水道や学校その他、各種の公共インフラ(本書では主に地方自治体負担分)がどんどん老朽化しており、改修更新が必要なものがどんどん増えている。そのための公共投資は莫大なものとなるので、いまから戦略的に考えておかないと大変、というもの。

その計算方法と今後の資金確保の方策などはきわめて具体的で現実的。高度成長期の想定で作られたインフラをそのまま維持することはできない。やはり人口減少に伴い、必要インフラが減ることを考え、優先順位をつけて経費を圧縮しつつ、インフラの廃止を考えるべきで、そのためいまのうちから住民の理解をとりつけておく必要があることを指摘。単純な廃止から広域連携も含めた統廃合、売却等々をやることで帳尻をあわせろ、という。またインフラの運営に関しても、PPPやPFIの活用を通じた効率化やコスト圧縮を、という。PPPやPFIも成功ばかりではなく問題もあるんだが、提案としては考慮に値する。最後には震災復興の提案もある(ホント馬鹿な復興委員会なんかやらなくても、これそのまま使っちゃっていいと思う)

中身は具体的な計算法とか財源のあれこれ、著者が一部の自治体で実際にインフラの長期計画をたてて住民に説得したときの体験などが多い。総じて実務っぽい。新聞書評だと、なんだかアカデミックな本や高尚な本が優先になって、こういうきちんとした実用書があまり採り上げられないのは前から残念だと思っているので、やりたかったところだが、これからアレやってこれやると……ちょっと無理。残念。放出するが、他の書評委員が採り上げたがるような本ではないからなあ。



悔しいから何とか押し込んでみるかなあ。アレをこっちでこれをもう一週で……

交渉して、押し込むことにした。採り上げる予定だった本が、読売かどっかで松原隆一郎の長い書評に挙がっていて、ぼくはかれの都市についての発言はすっごく感心するわけじゃないが、今回に限ってはさほど異論もなかったことだし、類似テーマを別角度から扱った本書のほうがいいかな、と思ったもので。



クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.