大槻先生がお書きになった――というより語り下ろした、というべきか――サブカル論というよりは自分の一代記。でもその中で、バンドやりたいとかクリエーターやりたいとか、あまり普通に就職しなくてもいいから好きなことやりたい人向けのいろんな指針がある。これをマジにガイドとして使うやつはいないだろうけど、事務所との契約とか懐事情とか、サブカル系のいろんな落とし穴とか、結構おもしろい。
人気が出てしまうことの弊害とか、「プロの客になるな」とか、いろいろ含蓄のある話も結構あるし、「自由の不自由」とか、ぼくのたかがバロウズ本にも通じるなあ、という中身もさらっと出ていて、やっぱえらいもんです。書評するって本じゃないけど――と思うんだがたまにこういうのもとりあげたほうがわけわかんなくていいのかな、とは思うんだけどね。でもいま書評委員がやたらに多くてあまり回数がまわってこないので、遊びの本を入れる余裕が減り気味なので自分でもよくないなー、と思うんだけど。
芸能人やロッカーにありがちな「おれは夢と信念をつらぬいていまの地位を築き上げたぜ、あきらめずに挑戦すれば夢はかなうぜ!」みたいな自画自賛オレ様本とは全然ちがい、ホント己の立ち位置にも冷静だし謙虚で立派だけど、それでも、世間的にグレートかどうかとは全然関係なく生きる一つの成功事例として、とっても楽しく読める。
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.