ターケル『仕事!』:まだ途中だが涙が出そうなほどいい。

 分厚い本だし、場所ふさぎだし、過去20年で何度か資料や邦訳確認で使っただけだし、たぶん質より量って感じだろうからさっさと読んで処分しようと思って読み始めたが、ちょっとすごすぎて処分できそうにない。

 農民、新聞配達の男の子、建設、日雇い、その他あれやこれやの談話集。学歴はないのに異様な教養を端々にのぞかせたり、単純な生活の苦しみと自分の仕事の意義に対する疑義や自信のないまぜの気持ちをぼくとつかつ雄弁に述べたり、彼らが述べる労働運動や黒人解放への違和感とか、あちらこちらに輝く細部がありながらもの悲しい。グチと自慢と正直な感想と、見栄と不安と、自負と諦念と時代への反発と、孤独と仲間意識と、とにかくすべてがある。だれもかっこつけた公式見解なんか述べず、素直に語っているのはすごいし、これだけ多様な人にこれだけ語らせているインタビュアーの力量もとにかく圧巻。驚いた。



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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.