平野『ライブハウス「ロフト」青春記』:知ってる人には本当にジーンとくる本なんだが……

 うーん、どうしたもんか。ロフトといえば、知っている人はみんな知っている、知らない人はまったく無縁な世界だけど、音楽のみならず最近のロフト+1とかでもアレだし、日本文化で重要なスポットではあるし。そしてその親玉平野氏の一代記は感動的なんだが……

 一方でこれがいまの環境で、体制にとらわれず自由に生きようみたいな話で消費されちゃうのもどうかなあ、という気がしていて。かつてバブル期なら、いろんな生き様があって悩みがあって、晶文社が「就職しないで生きるには」シリーズをだしたり、石立鉄男の青春ドラマが共感を呼んだりとかいうのがリアリティあったと思うのね。そして本書なんかもそこにうまくおさまったと思うんだが。ちがう可能性の生き方として希望の糧になるだろう。dna lounge を買った Jamie Zawinski なんかもそうだけど。

 でも現状ではそういうのが「就職できないなら起業したまえ」とか安全なところからアジるのになっちゃいそうで、そんなのに荷担したくないし、どうしようかこうしようか。当初の考えでは、こないだボツを決めたバックパッカー本とあわせ技でこれを、とか思っていたんだが、うーん。かといって「一つの時代が云々」といった変な達観もいやで、さてどうしようかこうしようかああしようかそれともうーん。ポジティブでもあるがあおりもせず、さりとてネガティブにもならずに価値は認めつつ、一方であんまり他人事めかさず多少はロフトにも足を運んだ人間としてのアレものこしつつ…… nah, something has to give. But what?



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