アセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』:アセモグルきたー! 世間的な認識は妥当なものか、実物読みましょう。

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源

アセモグルきたー! です。ぼくもちょっと協力したもんで、うちにはすでに届きました。

この本は、一般には「経済発展には制度が重要なんだけどぉ、制度ってなかなか変わんないしぃ、数少ない成功例は血みどろだったりして全体で見るとホントによかったかわかんない、みたいなフランス革命とかだしぃ、まあ基本的にはお先真っ暗でゼツボーで、経済発展なんかするほうが奇跡っつーことでオマイラ努力するだけ無駄かもねハッハッハ」というような本だと思われている。

その例として、たとえば拙訳のバナジー&デュフロ『貧乏人の経済学』は本書について最後の章でかなり批判的に延べ、そんな大文字のでかい制度が変わらないとすべてダメっておかしいよね、と言っている。また、青木昌彦講演会でも、この本は「制度なんてなかなか変わるものじゃないよ」――つまりは経済発展なんか起きないよ、という本だとして紹介されていた。

本書を読むときの一つの視点は、この評価が正しいか、ということだと思うのだ。

実はこの本には稲葉振一郎が解説を書いていて、その際にかれがアセモグルに自分の解説の英訳を読んでもらってその是非を問いたいとか相談を受けたので、稲葉大人のムズカシく長々しい解説を英訳したがる物好きがどこにいるといふのだね、むしろポイントだけまとめて質問しなさいと言ってその質問状づくりもお手伝いしたのだ。その中に、上のような点もまぎれこませておいたので、ちゃんと彼なりの回答もきている。(解説の後にくっついてます)。もちろん、アセモグル自身は、自分が経済発展に否定的だなどとは思っていない。が……

本の醍醐味の一つは、それが必ずしも著者の意図通りにはなっていないということ。『便利は幸福をナントカ』という本でも、著者が主張したつもりの内容と、実際に本で言われていたことは、ずれている。それに最も気がつきにくいのは、当の著者自身だし、その意味でぼくは往々にして著者自身よりもある本をきちんと評価できていると自負している。

が、閑話休題。本書がこの著者の意図にもかかわらず、悲観的な本だとされているのは、正当なのかそうでないのか? ぼくもまだこの本をちゃんと読み終えていない(邦訳がすぐ出ると聞いていたので、ほっぽってあったんだよね。もっと早く出ると思ってた)ので、そこらへん確認するのが楽しみ。

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(下):権力・繁栄・貧困の起源



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山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.