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西垣『ネット社会の「正義」とは何か』:共同体主義と自由主義の間でお話し合いというだけでは……

書評

集合知を使って、とか一般意志2.0が、とかいろいろあるんだが……正直いって、ネット社会も集合知(最近話題になっているような意味で)もあまり関係ない本。

アマチュアがみんなで話し合って出てくるのが集合知、ということにしちゃってるので、サンデルっぽい熟議も集合知、民主主義もネットの知恵も集合知。で、共同体主義的な発想もあれば自由主義/効用主義的な発想もある、というのをいろいろな現実の例(死刑廃止とか)でやってみて、こういういろんな立場があるので、お話し合いをして決めてくのがいいんじゃないですか、ネットもあることだしみんながもっと社会参加するようになるといいんですね、というのでおしまい。

まあそうですねえ。それで?

効用主義全開、自由主義全開、共同体主義全開だとどれもアレだから、その間の妥協点をお話し合いで探ろうというだけの話だと、目新しいこと何もないし、ネットだからどうしたって話でもないし、いまの世の中すでにそういうもんだし。ところが西垣はこの単なる常識的な話に、N-LUCモデルなるご大層な名前をつける。ちなみにこの冒頭のNは、西垣のNなんだよ。あまりといえばあまりに恥知らずな自己宣伝売名ぶり。たぶんN-LUCモデルにかけると、この慎みを欠いたやりくちは却下されると思うね。

それぞれの個別問題をめぐる仮想的な議論は、論点整理としてうまくできていると思うよ。でもタイトルは誇大。読んでまあ損はしない。けど得もそんなにしない本だと思う。




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