Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 13

Against the Day

Against the Day

(承前

爆発を受けて、ボルシャイア・イグラ号は、なぜクレーターがないのかをしきりに不思議がり、艦上で大論争。キットと連れのプランスは、唖然。時空が歪んで鳥が突然あらわれ、地元民は凶兆だと大騒ぎしてキットたちに発砲したりする。キットは、ツングースカ大爆発四元数次元をこの空間に持ち込む試みだったのではと怪しみ、釣鐘梅木ちゃんに渡した四元数兵器(あらすじ9参照)がそれを引き起こしたのかも、とか考える。あたりからは、何やら爆発跡をうろつく変なお化けのような存在の目撃談がいろいろ出てくる(なんだか飛行船みたいだとか)。そして、モンゴル国境あたりまできたところで(ホーメイで有名なトゥヴァのあたり)プランスは「ここが地球の中心だ」と言い出し*1ホーメイの歌声が流れる中でそこにとどまる。すると、頭上に Inconvenience 号があらわれて、かれを搭乗させる。

一方キット君はシベリア流刑者が遊牧民となったブロドヤギたちに加わって旅を続け、シベリア鉄道とタクラマカンを結ぶ鉄道路線に出る。そしてブロドヤギたちを離れて一人で移動するうちにキャンプに出くわし、そのキャンプにいたのが、なんとフリートウッド・ヴァイブ(あらすじ5に登場)。父親のスカースデール・ヴァイブは、イタリアで何かあって幻覚に悩まされるようになっているとか。フリートウッド・ヴァイブ自身は、ここで伝説のトゥヴァ=タクラマカン鉄道を探しているんだって。そしてもはやシャンバラを求めているのではなく、いくつかの隠された都市を求め続けているんだとか。

二人は、今なら相手を殺せると思いつつ眠りにつく。翌朝、キットの姿はもうなかった。


Inconvenience 号は、またシャンバラにやってくる。ツングースカ大爆発のおかげで、これまでシャンバラを保護していた透明保護幕がふきとばされて、これまでシャンバラやInconvenience号があったメタ空間とこの現実空間がいっしょになってしまった、らしいぞ! Inconvenience号ではツングースカ大爆発についていろいろ憶測がとびかう。悪漢の仕業か、あるいはニコラ・テスラの仕業では? 事態の打開のため、かれらは宿敵ボルシャイア・イグラ号と会談。

ダリア、サイプリアン、ヤシュミン、リーフ――みんな6月30日を、思い思いに過ごしつつ、天の異変に気づかされる。それは吉兆のようでもあり、凶兆のようでもある。みなそれを不穏に思い、何かを期待しつつ過ごすが、もちろん何も置きはしない。その夜空の異変は一ヶ月続くが、やがてみなそれに慣れてしまう。恐れや期待のあまり不眠に陥った人々も、やがて眠りの中へと誘われる――日に抗う夜の中へと。

(つづく)



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*1:実はトゥヴァは本当にアジアの中心を名乗っており、「ここがアジアの中心」という記念碑が本当にある。写真参照。