市民がつくった電力会社―ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命
- 作者: 田口理穂
- 出版社/メーカー: 大月書店
- 発売日: 2012/08
- メディア: 単行本
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電力会社というから、最初は発電だと思ったんだよね。ディーゼル発電機でも入れたか、あるいは不安定な自然エネルギーでも入れたか、それをどうやって正当化しているのかなという意地悪な興味で手にとった。
でもここでの電力会社は発電は(まだ)やっていない。送電線(配電も込みみたい)を独占電力会社から買い取って、送配電事業をやっている。いまなら、電力自由化で電力会社にwheeling charge 払ってできる仕組みかもしれないけど、彼らがこの仕組みを始めた頃にはそんなことはできなかった。
ただ、電力会社というと、日本では垂直統合の発送配電込みで考えるので、それとはちがうのだ、ということを明示しておかないと、手に取った多くの人はだまされたように思うんじゃないのかなあ、と老婆心ながら思う。ぼくの印象だと、ほとんどの人は送電とか配電とかまったくわからず、線をつないであとは放っておけば勝手に電気がくるように思っている。だからその部分だけを持ってます、というので理解されるんだろうか、とは思う。
もともと反原発で始めたことだそうな。で、電力はノルウェーの水力発電による電気を買っている。本書は、それが成り立つまでの結構長い闘いをこまごま描いている。記録としては非常におもしろい。何も知らない人々が集まって、付け焼き刃で勉強しつつ送電や配電のオペレーションをある程度やっているというのは大したもんだ。えーと、電験一種がいるのかな? いやそれじゃ足りないのか。
その一方で、こうした事例はここしかないとのこと。シェーナウの事例がそんなにすばらしいなら、他のところはなぜ同じことをしないのか? ぼくはそれが知りたいところ。上で述べたように、いまはそういう必要がないからなのかな? あと、結局これはでかい産業用途とかないからできている感じではある。興味深い事例なんだが、もっと調べないといけないし他の本との兼ね合いもあって、パス。でも、ささっと読めて悪くはない本。
(そういや今日のは二冊とも大月書店だな……)
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