木原『ピンチョン「逆光」を読む』

ピンチョンの『逆光』を読むー空間と時間、光と闇

ピンチョンの『逆光』を読むー空間と時間、光と闇

解説書としてはよいと思った。でも、あらすじ解説はぼくがここでやったもののほうがいいと思うけど。いろんな概念や用語の簡単な説明は確かにありがたいし。でも、ごく普通の解説で、これが独自に開拓している新しい読み方みたいなのはあまり感じられない。これをとりあげるならピンチョンの小説そのものを書評すべきだと思った。

あと、この小説についてのぼくのレビューのうち「細部をほじくるカニを喰うような作業におもしろみを感じる人には是非」という部分を引いて、でもそれは自閉的な行為ではなくそうした細部に世界を見るような作業なのでありヲタどもが細部の追求で世界を拓くのにも通じる、と愚かしい現代思想家を引き合いに出して木原はいうんだが……まあ盆栽に宇宙の縮図を見るといった話ですかね。でもいまのヲタどものやってることを、そんな高邁な代物だと思うのはまちがっていると思う。そしてピンチョンを読むのは、そういうのとはかなりちがう作業だと思うんだ。これはいずれどっかで書かないとね。



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