- 作者: 米山秀隆
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2012/06/02
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 25人 クリック: 563回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
真実といっても、別に特別な真実はなくて、原因も対策もごく常識的。いや一瞬、「空き家急増の裏には、実は太平天国教団の陰謀が!」とかいう本じゃないかという懸念が脳裏をよぎったが、そんなことはない。きわめて堅実でまっとうな本。最近、高齢化とともにまったく利用の予定や見込みがない空き家が増えていて、それを何とかしないと治安面でも環境面でもいろいろ問題が起きるよ、という話を統計的なデータも使って整理しつつ、一部の自治体や他国での対応も見ながら、日本で今後どういう施策を進めるべきかを簡潔に論じた本。空き家はもちろん一軒家だけでなく、マンションなんかも含まれる。行き場のない歳寄りばっかのマンションが歯抜け状態になって建て替えも補修もできないと、ちょっと悲惨を通り越したものになるし……
この問題自体はとても重要で、うちのまわりでも空き家がたくさんあって、ボロボロだったり雑草が生い茂ったりと、見るからによくない状態であっても、他人の物件だから勝手に草刈りもできないし家を修理するとかも無理だし、さてどうしたもんか、というのは近所の話でよく持ち上がること。答は、責任負わせてもしだれも手を出さないなら自治体が乗り込んで取り壊しなり各種処理ができるような仕組みを作るとともに、大きくはコンパクトシティ的に移住なんかを進めて潰すところは潰してしまいメリハリつけること、もっと優良賃貸への転換やシェアハウスなどの活用をしやすくし、一方ではもうこれ以上新築が増えないように各種優遇策を撤廃すること。もちろん、これを実際に政策的にやろうとすると、総論賛成で各論反対になりやすい。私権制限して公共が放置してある土地は問答無用で(いや問答相手がいればするけど、その相手すらいない場合が多いので)バリバリ壊し、お涙頂戴の新聞なんかが好きな「50年も暮らしてきたこの家から追い立てられるかわいそうなおばあちゃん」とかいうのを蹴倒して、おまえ無理にでもあっちに移す、とかいうのをやらざるを得ない場面も多々出てくるだろうから。でも、だからって手をこまねくわけにはいかないというのも本書でわかる。
きちんと整理されていてよい本だと思うし、主張も妥当。こういう実用書っぽい、派手さはない(けど重要)な本というのは、新聞の一般向け書評では採りあげにくくて、それに気にしてる人はタイトル見て勝手に読むだろうと思うし、そんなこんなで書評にはとりあげないけれど、だんだんあちこちで問題になる話なので頭の片隅にでも入れておくと吉かも。
コメント
ツイッターとかでやたらに食いつきがいいんだが、結構みんな関心あるのかなあ。扱うほうがよかったかも。ちょっと考えよう。
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.