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コープランド『チューリング』:この程度で刷り直したのお??

チューリング

チューリング

最近、チューリングの伝記が送られてきて、そのうち読んでみようと積んでおいたら、またもう1冊送られてきた。なんか前のやつにミスがあったそうで、刷り直したとか。うひー、それは災難です。それも訳者あとがきのところにミスがあったそうな。訳者あとがきなんてしょせんオマケに過ぎないし、そこのために刷り直すというのは、なんだかよっぽどひどい差別用語とかとんでもない誤植とかあったんだろうなー、と野次馬根性むくむく。

というわけで両者を並べて見たわけですが…… こんなもんで刷り直したんですか!

もとのやつは、奥付を見ると11月15日初版初刷。新しいやつは、12月12日初版初刷。で、ちがいは:

11/15版 p.398
「映画監督ダニー・ボイルが総合演出したこのイベントは」
12/12版 p.398
「それは『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー監督賞等を取った映画監督ダニー・ボイルが総合演出したイベントだった。」

11/15版 p.406
「新たな発見に満ちた内容に仕上がっている。」
12/12版 p.406
「新たな発見に満ちた内容に仕上がっている。また本書を補うようにチューリングの業績やコンピュータの歴史を集めたサイト(Alan Turing.net, http://www.alanturing.net/) も運営しているので、そちらの思慮を参照すると、本書をもっと活用できるだろう。」

11/15版 p.408
「映画では現在、イギリスの人気俳優ベネディクト・カンバーバッチが」
12/12版 p.408
「映画では現在、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』で好演したイギリスの人気俳優ベネディクト・カンバーバッチが」

11/15版 p.409
「訳者の無知を反省するよい機会となった。」
12/12版 p.409
「訳者の無知を反省するよい機会となった。なお、文中の[*番号] は原注を示し、訳注は [] 内に言葉で補った。言語のmachine は歯車などを使ったハードウェアとしての意味合いの強い場合は『機械』とし、論理的な意味で用いられるときは『マシン』としたことをお断りしておく。」

うーん、ざっと見るとこれだけみたい。他にも細かいところで何かあるかもしれないけれど。でも……たったこんだけのために刷り直したんですか??? びーっくり。ウェブにサポートページでも作って軽く直してけばすむと思うのに。ついでに、カンバーバッチは『シャーロック・ホームズ』を挙げるべきでしょー。

本自体を読むのはこれから。でも、ひょっとすると11/15版は回収とかされちゃってるんですか? 持っているとレアものとして価値があがったりするかも……ないか。

付記

訳者からメールが来て、その他訳注が20ほど抜けていたのも直したとのこと。で、それ以外にもものすごく長い説明がついていて、要は

無関心な一般消費者から見れば、商品を買って別にそれがあるなしで内容や味が変わるわけじゃなし、という論議も成り立たないとは思いません。

しかし、この論は出版社、筆者もしくは訳者、もしくは食品メーカーやホテルやレストランなどの当事者や関係者の目から見ると違うものになります。

ということで、これは訳者と版元との信頼関係の云々の当事者の間で云々ということだそうな。くだらない。ぼくは本を読むときは常に無関心な一般読者だ。それ以外のことを考えるのはなにやらギョーカイジンのなれ合いに堕すことでしかない。さらに訳者や著者として本づくりの当事者になるときも、製造工程における一業者にすぎない。「当事者」だの「関係者」だのの事情云々で客に余計な心配をかけるって何事? 商品としての内容や味が変わらないのであれば、回収とか再版とかで11/15版を買ってしまった人に不安を引き起こすようなことをすべきではないでしょう。おまえも長い訳者解説書いてるからわかるだろうというんだけど、まったくわかりません(だから訳者あとがきに加筆訂正したければサポートページでやってます)、わかるほうが不健全だと思う。そんなものがわかってしまうのは、先生づらしたエリート意識でしかないと思う。



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