反知性主義はちょっと疲れたのでお休みして、思いつきの書き殴り。
- 作者: エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson),アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee),村井章子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/07/29
- メディア: 単行本
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現在、半ば義務的にぶにょぶにょそんたちの『第二機械時代』を読んでいる。書評はまたきちんと書くけれど、ぼくはこれを手に取ったとき、おそらく多くの人と同じように、これが『機械との競争』の続編だと思ってたのね。
- 作者: エリクブリニョルフソン,アンドリューマカフィー
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2013/08/12
- メディア: Kindle版
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ぼくの『機械との競争』感想文はこちらだけれど、ここで書いたような不満とかその他について(別にかれらがぼくのを読んだってことじゃなくて、ぼく程度が考えることは他の人も考えるから)きちんと反論なり考察なりをしたものだと思ってたわけ。
ところがそうじゃない。実は『機械との競争』は自主出版みたいな電子ブックで、今回の『第二機械時代』はその増補版というか、ホントに紙の出版用にいろいろ調べて分厚くした、というものらしい。だから、議論は変わっていない。いろんな事例や見学した結果やあれこれは追加されているし、いろいろ議論に周到さは出ている(i.e. 逃げ口上が増えて回りくどくなっている)面はあるけれど、まさにそのために、『機械との競争』よりは議論の見通しがわるくなってしまった面はある。
が、この本をはじめ機械が人間の仕事を奪うといった本が人気を博し、あとはAIだのシンギュラリティだのが出てきて、いずれ機械が人類を滅ぼすんじゃないか、という『ターミネーター』脳があちこちで湧いて出てきている。
いやあ、たぶんそんなことはないんじゃないかな、とぼくは思っている。それが証拠に、ぼくはたいがいの人間よりも賢いけれど、他の人間を滅ぼそうなんて思ったことがないもの*1。
そしてもっと別の方面から考えるにしても、機械が本当に賢くなるなら、その「賢い」の定義にもよるけれど、人間をうまく利用して奉仕させるなんて、お茶の子さいさいのはずだとぼくは思っている。いや、それはすでに起きていると思う。人間なんてバカで、画面上でピクセル動かしてピコピコ音をあわせたりするだけで、何時間も飯も食わずにコントローラ握りしめて各種作業するし、それを目当てに各種のコンピュータやグラボは買い換えるわ、回線強化してインフラ整えるわ、機械にさんざん奉仕するじゃない。ぼくは、あれは機械進化の結果だと思ってるんだよね……という話を昔、『コンピュータのきもち』で書いた。
さらに人間と機械は、出自がちがうので、同じリソースをめぐって争う必要がない。これが動物だと、居住空間とか食べ物とか毛皮や肉とか、競合する資源がある。だけど機械とは競合しない……完全にしないとは言わないけれど、他の動物と比べれば大幅にちがう。人間はお金や女や権力を巡って争ってきたけど、機械はお金とか関係ないし、セックスもしないし(人間のほうはしたがる人もいるけど)、権力も関係ない。だから機械やAIが賢くなっても、別に人間なんか滅ぼす必要なんかまったくない。人間にそういうものをエサとして差し出せば(あるいは実物なくても画面にその絵を描いてやるだけで)人間はホイホイ動くし掃除もするしメンテもするし。機械にとってこんな便利なものはないよ。
そしてこれはまさに、職を作る、雇用を作る、ということだ。機械は人間にとってのエサなんか苦もなく作り出して、人間が何やら生物学的、経済学的(人間の経済ね)報酬を得られるようにできるはずじゃないの、とぼくは思っている。それはつまり、人間が機械のペットになる、ということでもある。昔、Porno for Pyros が歌った通り。
Will there be another race
To come along and take over for us?
Maybe Martians could do
Better than we've done
We'll make great pets, we'll make great pets
(権利関係とやらで、オリジナルのプロモビデオが表示されない。残念!)まあ、ペリー・ファレルみたいなキXXイをペットにしたい機械がいるかどうかはわからんけど。そして、人が己をペット化するにつれて何が起こるか、というのを昔考えたことがあるんだけど……また引っ張りだして仕上げようかな。
同時に、こういうのをあわせてそろそろ『第二機械時代の理論とデザイン』を真面目に考えだしてもいいかな、という気もする一方で、サイバーパンクがかなりの仕事をやってしまったかな、とも思うんですが、どうなんでしょうね、バンハム先生?
- 作者: レイナー・バンハム,石原達二,増成隆士
- 出版社/メーカー: 鹿島出版会
- 発売日: 1976/01/01
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*1:ただし個体レベルではある。あいつとあいつと、今日昼のカレーやで隣にすわった仏頂面のあいつは滅ぼした方がいいと思う。