Frankfurt, <i>On Truth</i>: やっぱウンコというのが入ってるのがまずいってことなんだろうか。

拙訳で邦訳された『ウンコな議論』の続編とも言うべき本が出ていて、諸般の事情でやっと最近読みました。で、アマゾンにレビューを書いたら……掲載できないって。何もまずいことは書いてないと思うんだけど、察するにレビューを判定するAIが、「ウンコ」に反応してはじいたんだと思う。他に仮説あれば是非!

On Truth

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ウンコな議論続編:なぜ真実は重要なのかを改めて論じた本

On Bullshit (邦訳ウンコな議論)が意外なベストセラーになったフランクファートが、続編を書いた。ウンコな議論はウソよりひどい、ウソは真実を前提として、それを歪めることで利益を得ようとするから一応真実にそれなりの重きを置いている。でもウンコな議論はそもそも真実かどうかはどうでもいい、情報量がない雑音でしかないので、その蔓延は真実の価値を貶める、というのが前著の議論だったけれど、それに対して「真実なんかないからそんなのどうでもいい」というポモな人々からの批判があったそうだ。それを受けて、改めて真実は重要なんだと力説した本。結局、自分自身をはっきり省みて己にとっての価値や意義を見つけるのが重要というのがフランクファートの全哲学の基本だけれど、ある程度の客観性を持つ真実がなければ自分自身を理解することさえできない。真実はないとかいう主観論や相対主義は、部分的に白黒つけにくい部分もあるという話を必要以上にひきのばした無益な極論にすぎない。「真実は事実とはちがう」などと妄言を述べる連中も同罪。真実を重視し、自分の何たるかを見つめ直そう! というのが主張となる。日本の新書くらいのサイズに大きな字でページ数も実に少なくて、通常の論文1本にも足りないくらいの長さなので、コスパ的にどうか、とは思うけれど、手軽に読めて奇をてらわず変な時事性に色目も使わない、王道をいく哲学書です。

参考:

ウンコな議論

ウンコな議論