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長すぎるため、どうでもいい些事のてんこ盛りに堕し、徒労感が多い一冊

Le Corbusier: A Life

Le Corbusier: A Life

 長い! とにかく長い。しかしながら、ル・コルビュジエは大建築家ではあるものの、実はそんなに波瀾万丈の人生を送ったわけではない。かれの人生で最大のできごとは、かれの建築でありモダニズム運動で、それ以外の部分はまあ普通の人なのだ。それなのに無理にあれこれつめこむので、焦点に欠ける本となっている。

 冒頭は、ル・コルビュジエの葬式の話で、だれが弔辞を読むことになったが実はそれは予定とはちがい、ル・コルビュジエ自身の意図と合っていたかあやしくでもみんなル・コルビュジエにあやかろうとして云々。そんなどうでもいい話がオープニングから100ページも続いて、冒頭からすでに本書の「それがどうした!」感は全開。

 で、一応伝記ということで、もうたくさん出ている建築作品集的なものとはちがう視点で攻めようと考えたのはわかるんだが、その視点というのが、ママとの関係と性遍歴と愛人。実はル・コルビュジェはマザコンで、あちら方面に自信がなかったので長いこと素人童貞だったんだが(売春婦はたくさん買っていた)、実はケツのでかいグラマラスな女が大好きで日々悶々としていて、それがかれの絵にもあらわれていて云々、といった話を、若かりし日の手紙を延々と引用しつつ述べるんだが、そんなことを聞かされても読者としてはどうしろと? それも別に大したスキャンダルがあるわけじゃないし、多くの人が興味を持っているであろうル・コルビュジエ創作の秘密みたいなものには全然迫れない。

 後にモダニズム交友録になったり、チャンディガールなどを含む政治的なあれこれが出てきたりと、作品に係わる部分は少し盛り上がるが、それもあまりに細かすぎ、あれもこれものゴシップ集に堕す。そして、基本はル・コルビュジエはたいへん嫌なヤツで、身勝手で、人の意見なんかきかず、わがままだったというのはよくわかるんだが、それで? おそらくこの伝記を読んでも、かれの建築への新しい視点は何も得られないだろうし、そしてル・コルビュジエについて建築以外のことに興味がある人なんて……いるの? 読むと、腕も、目も、頭も疲れますが、やっぱりル・コルビュジエが好きなら作品集を普通に見た方がよいと思う。

(アマゾンがのせてくれないらしきレビューを載せることにした。これはなぜはねられたんだろう?)。追記、その後ものすごく時間がたってから載った。少し字数を削ったのが効いたらしい。



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