マンソンファミリーが昭和天皇暗殺を計画していた!!!

ウィキリークスのネタ。1975年にマンソンファミリーが、チャーリー・マンソンの釈放を要求してフォード大統領と裕仁天皇の暗殺をたくらんでいた! すごい。なんか映画みたいな話だ。

Cable: 1975MONTRE01596_b

だれか、これをネタに歴史改変SFを書かないかなあ。しかしこれが万が一成功していても日米関係が険悪になる、というのは考えにくいし、うーん。せいぜいがカルトの取り締まり激化くらいか?うまく話が思いつかない。

ヘラー『グリッドロック経済』

もう2010年に脱稿して以来、一向に出る気配がないこの本。所有権とか細分化すると、あとあと収拾つかなくなって身動きとれなくなるよ、という本。権利者の分散によるごね得問題というか、地上げ屋の悩みみたいな話は昔からあって、それ自体は目新しくない。でもそれが実はかなりいろんなところに(しかも善意から)発生しているので、注意していないと気がつかないこともあるし、そういう事態を指摘するところから始めろ、という本。コモンズ管理の手法の議論などともあわせて、問題と解決法まであげて、決して悪くない本ではあるけれど、まあ古い問題だしそんな決定的な解決策が挙がっているわけではないのが弱いところかな。

丸6年以上もハードディスクの肥やしになってるのはそろそろ飽きたし、まさに本書で描かれている変な権利者のアレで資源活用が阻害されている例だと思うので、放出します。事例もちょっと古びてきた部分もあるし。

ヘラー『グリッドロック経済』(pdf, 1.5MB)

出したいという出版社があればご一報を。

付記

……と出しておいたら、本当に手を挙げたところがあって、出ました。

グリッドロック経済――多すぎる所有権が市場をつぶす

グリッドロック経済――多すぎる所有権が市場をつぶす

落ち穂拾いの感想文

いくつか読んだけど感想書いてないしどっかで採り上げる感じでもないものについて簡単に羅列。そういうものなので、あまり大プッシュ的なものはないけど……

移民の経済学:だいたい予想通り

移民の経済学

移民の経済学

題名通りの本で、ほとんどアメリカを中心に移民の影響として懸念されているものについて、様々な論者が検討したものをまとめた論集。移民がくると職が奪われるとか、移民がくると賃金下がるとか、移民が来ると文化侵略されるとか、移民だと福祉負担がとか、その手の話を検証したもの。

ただ、こういう話を経済学者がやると、だいたい結論は読む前から予想がついて、その予想をはずれるものはあまりなかった。基本、自由貿易の話と同じで、経済学の基本は市場に任せろ、介入するな、長期的にはすべてオッケー、というもの。移民についても、だいたいそういう話。移民来ても、職は奪われない。賃金も一部を除けばそんなに下がらない。文化侵略もそんなになさそう。福祉も長期的には問題なく、いい面もあったりするかも。高技能者やお金持ちだけきてもらうような、移民ポイント制みたいなのは一部の不安に応える意味でいいかもねー。なんかそんな話になってる。

それはまあわかる。トランプの、メキシコ国境に壁を作れとかいう話はだいたいこれでナンセンスなのはわかる。でも、それがナンセンスなのは、この本を読む前からわかっていたことだ。そして、この本の著者たちの言うとおり、人もモノも(明示はされないけど)お金もすべて自由に流通しろということになったら、基本は国という概念自体が非効率ということになる。でも、EUの現状見てると、あわてて国を実質的に廃止してもあまりよいことはなさそうだ。最適通貨圏にあわせて国境を常に調整しつつ、みたいなことができたらいいのかもしれない。でも、それにしても国とか社会的なまとまりとかいうのは、まったく考えなくていいのかなあ。

それともちろん、いまのEUみたいにシリア難民/移民やアフリカ移民が数百万人単位で押し寄せるのも本当にいいんですか、というのは考えねばならない。いまそれなりにインフラも職も余裕があるところに、その範囲内の移民がやってくるのと、そうでない場合とでは話がまったくちがうだろう。この本の中でも、移民慎重論の学者の説が紹介されていて、アメリカの最適な移民はいまの3分の1くらいのペース、とされている(あくまで伝聞的な紹介にしかなっていないのが残念)。こうした、最適移民数とかを考えてもらって、それに基づいていまは多すぎるとか、いまはもっと増やしていいとか言わないと、まともな議論にならないわ。移民がいいか悪いか、というデジタルな話ではないはず。でも本書はそれはあまりできていない。

監訳者藪下は、本書を紹介して「移民はプラスだウェーイ」という紹介をしている。でもそれでは結局、議論はまったく深まらない。トランプ流のいい加減な話といっしょだ。移民はどんな量でもどんな形でもまったくマイナス面はなくいいことずくしなんですか? そんなはずはない。短期で無理すれば歪みは出てしまう。それをどう抑えつつ移民を入れていくのか、というのが重要なはずだし、それを示すことで移民反対はだって納得しやすくなるはずなのに。

toyokeizai.net

経済学的に見た移民の基本的な考え方を把握する意味ではいいんだけど、でもそれ以上にはなっておらず、うーん。悪い本ではないけど。

情報戦のロシア革命:むしろスパイ列伝

情報戦のロシア革命

情報戦のロシア革命

ロシア革命をめぐる各種の諜報活動について、いろいろ情報公開の結果としてわかってきたので、それをまとめたもの。実は表で公表されていたのとはまったくちがう、非道な合従連衡が……というようなことはあまりない。本書はそういうマクロな話よりは、むしろマクロな部分はすでに解明されている通りで、その背後でどんなスパイたちがうごめいていたかを述べる。スパイと言っても、もちろん007が活躍するわけではなく、外交官とか、もっと多いのはプロパガンダに利用されていた共産主義シンパの(バカな)インテリどもや色仕掛けにはまった連中とか。

チャーチルの妹とか、お調子者のバカなアーティストで、やめろと言われてるのにロシアにでかけてトロツキーたちに取り入ってみたりとか、あちこちで女の子をたらしこんでは情報を集めていた外交官、単細胞バカで情報流すとすぐに騒ぎ立てた西側軍人、勝手に共産主義に思い入れて、頼まれもしないのにそのプロパガンダをやってあげた、バートランド・ラッセルとかH・G・ウェルズとかアーサー・ランサムとか。そいつらの(余計な)入れ知恵で多少は西側諸国の対応が変わったりする面もありはした。でもそんなに大きな影響ではない。

ロシア革命の細かいところに関心ある人は読むとおもしろいとは思う。たださっきも書いた通り、それで大局が変わるわけではない。

アーサー・ランサム自伝:仕掛品じゃねーか!

アーサー・ランサム自伝

アーサー・ランサム自伝

上の『情報戦のロシア革命』に頻出し、最もお調子者のバカなロシアの提灯担ぎとして描かれているのが、かのアーサー・ランサムアーサー・ランサムといえば、名作『つばめ号とアマゾン号』シリーズで有名な、のほほーんとしたブルジョワだと思っていたので、それが社会主義なんかに入れあげていたというのは本当に意外だったので、そこらへんの事情がわかるかと思って読んで見た。が……

これさあ、ランサムは本当に断片的にしか書いてなくて、それを苦労してまとめただけなのね。しかも、昔の学校時代の恨み辛みとか、就職できずに苦労した話とか、そういうのばっか書いてあって、肝心な話が何も出ていない! どうやって社会主義にはまったのかとか、ほんと軽くしかないし、さらにはランサムが死んじゃったから、『つばめ号とアマゾン号』のところにさしかかる前で話が終わってる! なんだよこれは!こんな仕掛品を出さないでほしいよ、トホホホ……

ぼくのエア:ぼくにはいらない本

僕のエア (文春文庫)

僕のエア (文春文庫)

Cakesの連載で、海猫沢めろんに会って話をしたというネタを書いた。中央線の中でオカルト話をきかされた、と書いたんだけれど、そのオカルト話というのは、この本の解説で海猫沢めろんが書いている内容の詳細版だった。話をきかされて、「ここの解説にも書いた」と言われたので、読んで見ようと思いました。が、電車の中で聞いた話のほうが濃かったなあ。

で、ついでに本体も読んで見たけれど、ニートが妄想こじらせて騒ぐ話。海猫沢解説の最後で、本書の痛みを感じられない人は、本書を必要としない幸福な人だ、と書かれているけれど、情けないという意味で使われる「痛い」ならまあ感じられないでもない。でも痛切な共感という意味なら、ぼくはまったく感じられなかったので、つまりぼくにはそもそもこの本は必要なくて、幸福であるということなんだろう。

SexyCyborg様インタビュー(というか独演会)記録

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2016年12月20日 1400-1630

Holly’s Coffee @ 深圳 新世界購買中心

聞き手:高須正和、山形浩生

はじめに

SexyCyborg様を知らぬ者は幸いである。えー、彼女は中国のエレクトロニクス/ホビイスト系maker界隈では知らぬ者のない存在で、チョイエロ的な工作が十八番。おかげでmaker系とは関係ないフォロワーのほうが多かったりするけど、アイデアも設計も3Dプリントもコーディングも全部自分でこなす実力者。ぼくも今回インタビューすることになるまでは、単なる色ものねーちゃんだと思っていたので、前日軽く調べ始めて目を白黒して居住まいを正しました。お見それしました。簡単な紹介は以下の動画参照。


SexyCyborg feature on China Daily

作品とかはこのimgurに上がっているのがいちばん多い。さらに彼女のすごいのは、筋金入りのオープンソースフリーソフト支持者だってことで、作品はすべて回路もデザインもフリーで公開。当人も、ほとんどの技能はオンラインのフリーなリソースで身につけたとのこと。すげー。

FAQ はこちら:

SexyCyborg FAQ - Pastebin.com

インタビュー本体

高須「猫耳」正和がMakerFair深圳かどこかで会って、たまたまぼくが深圳にでかけていたときに、インタビューするからいっしょにこないか、とお誘いをうけた。事前にちょっと高須氏が質問を送ったところ、さくっと質問への回答がきていた。で、それを受けて、高須氏が「ありがとう!明日はMaking とsharingについて話がしたいと思う」と返事をした。そして当日、あいさつとちょっとした世間話の後にインタビューを開始しようとしたところ……

日本オヤジ二人:……じゃあ始めましょうか。えー……

SexyCyborg: (前置きなしでいきなり)そうそう、Making とSharing の話ね! それってすごく重要で、でもこの世界の一部って西側でもうクソで、ジェンダー差別せずインクルーシブなmake文化とか言ってるじゃない?でもそれって口だけで、あたしの格好がどうしたとかで、まったく扱ってくれないってとにかくろくでもないわよ、でもって女性メイカーとかいって、なんか編み物してるおばちゃんまで記事にしてるくせに、こっちはそんなレベルじゃなくて自分で3Dプリントしてコードも書いて、そういう本物を全然見せないで、女性メイカーの地位を高めたいとか言ってるけどふざけんじゃないわよ、それでなんだかメッセージがきて「誤解だ」とかいうんだけど、でもあたしがセックスワーカーみたいな格好してるから載せられない、とか言うんだけど、あたしだっていつも露出してるわけじゃないし、そうでないふつうの格好でMakeしてるのもいっぱいあるじゃない、それでもとにかく載せないとか、セックスワーカーみたいな格好してるときもあるからよくないとかなんとか、もうホント頭にくるわよダブルスタンダードもいいとこよ、インクルーシブで多様性とかいいつつ関連雑誌の表紙に女性が出たことないでしょう、ほんと最悪で教育用市場狙いだからおまえみたいなのは出せないって何なのよあれは、基本makeってのは最高の自己表現だと思っててあたしは高いバッグとか靴とか全然買わなくて、あんなの出来合いだしなにもオリジナルなものってないじゃない、でも自分でいろいろ作ることで、自分のオリジナリティってものがちゃんと出せてほかのどんな人ともちがうってことよね、だからあたしは自分の作ったものの商品化とか興味なくてむしろそれを見てみんな独自の作って!と思って何でも公開してて、AdaFruitのLimor Fried はもうずっと応援してくれててあたしのヒーローなのよね、もうツイートとか全部リツイートしてくれるし、そっちからもアプローチしたらしいけど全然どうしようもなくて、結局この世界の一つとかも白人の男ばっかでその価値観だけで、あたしの格好がセックスワーカーとかいうんだって、それは西側での話であってこっちでは別にそんな意味合いないんだけどどういう文化的な差も全然考えないで自分たちの価値観だけでなんでも話をしてて、まったくどうしようもないでしょう。あたしはもっとアジアの、それも女性をどんどん広めて活躍させたいと思ってんのよ、だから本業でRuby on Railsを選んだのも、Rubyは唯一アジア人の作った言語じゃない?もうそれがすごいって思って選んだんだけど (注:SexyCyborg様はウェブデザイナーが本業です) こないだきた、ギャル電とか結構女性でも活動できるのはいいわよねー、アジアではあたしもふつうに広まってるんだけど、でもそれでだんだんいろんな話もくるんだけど、一部のITの会社とかが「うちの秘書にならないか」とかで、女性秘書ってここらでは、昼も夜も(wink wink) お仕事みたいなニュアンスがあって、そんなもんやるかっ! ちゃんとmake活動をもっと広めないとと思って、で3Dプリンタ会社がうちの使えとかいうんだけど、これもステマみたいなやつだからいやだー、必ず写真撮るときはそのプリンタのロゴが入るようにしろとか、あれはすんなとかこれはダメとかうるせーんだよ、それと作品の権利もよこせとか、ちゃんと公開してシェアするのが大事なのよ。そこらへん、すぐにとにかくお金にしようとかで、ここらへんもちょっと思いつきがあれば、クソみたいなのでもすぐ起業とかいってお金集めだけするのが、もう勘弁してって感じだし、深圳は好きなんだけどそういうのも結構あってあたしにコンタクトしてくるのも、変なステマみたいなのだらけで上海とか北京の会社のほうがまだましで、うちで使ってる3Dプリンタの片方とかもそれでもらって結構いいんだけど、でもこれもステマにならないように写真の角度とか考えてあまり目立たないようにしてて、でも結構きくはきくみたいなのよね、質問とかでも「3Dプリンタは何使ってるんですか?」とか言われるんだけど、どれでも同じだ!そんなの何もちがわない!そんなこと気にしてないでとにかくつくれ!それをシェアしろ!あたしはもうビデオも作るし図面もデータも全部公開してるけどかなりの連中はシェアリングとか全然考えないで、無料でもらえたらありがとーだけど、何も返そうとしないのが増えちゃって、しかもそれを商売にしようとするあたしの偽物とか出てきて信じらんないわよ、昔とかあたし数学だめだから宿題見せてーっていうと見せてもらえたじゃない、で代わりにあたしが英語の宿題写させてあげてそれでシェアすることで発展するのが理想なんだけど、そういうのわかんなくて、Makeネタにしたリアリティ番組みたいなのやろうとしたりして、おまえも出ろって声がかかってたのに、そこんとこがイマイチわかってないみたいで断ったんだけど、どっかから変な女の子たちつれてきてくだらないことやらせて人気投票させたりとかしてクラウドファンディングする、みたいなのにして、それが最近になって得票を操作してたとかいうのがバレて、どこを勝たせるか決まってて70パーセントくらい票を盛ってたので、ファンディングした人たちからすごい文句でそういうほうにいっちゃうのがダメなのよ、地元でちゃんと共有してmakeするのを盛り上げてくってのをやらないと。

(注:ノンストップ30分! これでも実際の話の半分に満たないと思う。口をはさむ余裕ほぼなし!)

日本オヤジ二人:(圧倒されて呆然)…… 作品の一つのキャプションで、ここらの企業とコミュニティエンゲージメントの考え方がちがうと書いてたけどいまのはそれとも関係した話?

SexyCyborg: 最初の頃何回かいったけどその後もいろんなイベントに全然呼んでくれないしなんかあそこにいる女があたしのことずいぶん悪く言ってるとかで、あそこはいまいっしょうけんめい教育市場とかを見てるようでそれであたしみたいなのがいるとイメージが悪くなるとかなんとかそんな話じゃないかと思うんだけどまあ別にあたしは自分で好きなMakeを続けられればいいんだけれど、でもこうやって実際にモノを作っている女の子がいるというのはすごい重要なことだと思うのよ。教育市場とかいったって実際にそういう活動やってる人がいるってことのほうがアピールできるはずなのよね、それがちゃんと採り上げずに自分の思い込みにあわせてこっちにあーしろこーしろってうるさい! それやってるとまわりから、将来のことをもっと考えた方がいいよとかいう話で、おまえももう23歳だしこんなこといつまでも続けられないから、これを商業化して収入につなげるようなこと考えろとか、うちの会社で秘書やれとか、でもあたしはちゃんと本業もあるし、これはこれでお金にしなくてもやってけるから、「いずれおまえも結婚して子供作らないと」とか言われるけど、あたしは当分そんな予定ないし、Makeは究極のオリジナリティの表現のはずでそういうのにあわせる必要もないと思ってるけど、さっきのリアリティ番組のプロデューサーは何度も何度もコンタクトしてきて、いい人なんだけど向こうの勝手な鋳型にあわせようとするから「えー、いやですー」って断りつづけてたら「このオレの申し出をこんなにしつこく断りつづけたやつは一人もいない!」とか怒りだしちゃって、知るかって感じ、だいたいそういう申し出してるのはあんただけじゃねーんだよヘヘッ、テレビのプロデューサーとかだと、ふつうはタレント志望の子とかが必死で取り入って出してもらおうとするからなんだろうしふつうはそのために後付けでMakeやったりするんだろうけど、あたしはべつに国の起業家育成以外のでもちゃんとアピールがいると思ってるんだけど。

日本オヤジ二人:……あ、そういえば昨日こんな本もらったけど……(注:深圳ロボット協会みたいなのの総会でくれた。深圳の外国帰りの起業家紹介みたいな本)

SexyCyborg: これは知らないけど。でもちょっと外国いって帰ってきたら、すぐにだれがたきつけて「ちょっと目立つことやれよ、クラウドファンディングとか、そしたら国からお金引き出して補助金もらって起業して金儲けして」とかで、しかもかけ声だおれになっちゃって全然中身あるものが出てこなくてさあ、あたしはこんな外国で勉強したりしてないけど中国が好きだしその発展のためにはどうすればいいかを真剣に考えていて、いろんなことができるというのを示すことが重要なんだと思ってるからあたしみたいなのがいていろいろ成果をシェアしあうことで発展していくことを考えるべきだと思ってるわけ。

日本オヤジ二人:……えーと、ビデオとか見てると、部屋とか3Dプリンタが二台あってワークベンチも部品棚もあって、どこで寝食してるのかと……

SexyCyborg: そうそう、もうずいぶんせまくなっちゃって、あの部屋があって、ベッドルームがあってダイニングがあって、あとテレビの部屋だけどテレビはもう最近プロジェクターでやっちゃうんで、それから居間ね、そこはとにかくもうタオバオとかで買いまくってるので、すっげー物置状態ですごいことになってて人に見せられないんだけど、でも手狭ではあるわよねー、昔は200㎡の家にいたんだけど今のところはもう125㎡しかなくて(注:「しか」!!!!)、しかもマンションの上のほうであの部品用の台車がきたときにはもう大変で、重くて運べないし、しかも運送会社が「上までは運ばない、建物入り口まで」というんで「えー、あたし女の子だから無理、この腕見て」と言ったんだけどダメーっていわれたので、そこで組み立ててとにかく車輪だけつけてって言って、あとはゴロゴロ自分で押してきたんだけど3Dプリンタのでかいやつとかも運び込みにはえらく苦労したんだけどとにかく頑張って設置して、やっぱやりたいことがあるとそういうのも何とかなるもんよ。居間とか片付ければ深圳にくるハッカーMakerのためのAirBnBみたいなのできるかなーとか思ってるんだけどそれはそれで面倒そうだし、でも考えて見てもいいかもね。

日本オヤジ二人:Rubyとかできてもそこから3Dってハードル高いでしょ、どうやって……

SexyCyborg: それはもうコミュニティのおかげよ、いまはネットでもなんでもあるし、TinkerCADとかも使えってとにかくその気になればなんでも勉強できるし、困ったらここは深圳じゃない?そこらにエンジニアがうようよしてるからなんでも聞けるしオンラインもあるし、失敗何度もしながら一歩ずつ進めるしかないわよ、当たり前だけどいきなり成功するわけないんだし自力でいろいろやるしかないのよ、それはコードも同じで、本業のほうでもホントいろいろ苦労はしててECサイトとかの構築でもお客さんはあんまり知らないから、最近は新規のよりは既存のお客のサイトメンテや機能拡張なんだけど、データ分析すればここは緑にしたほうがいいってはっきり出てるのに、自分の考えでお客さんが「赤にしろ」とか言ってきてるのを一歩ずつ……

日本オヤジ二人:……え、そういうデータ解析までやるの?

SexyCyborg: ……やらないと仕事にならないじゃない!それをもとにずっと説得してて一歩ずつ作ってくしその中で勉強するんだけどMakeだって同じことで、でもそれをどんどん公開してくのが重要で、そうやって共有してちゃんとクレジットしつつ発展するから、あそうだ、こういうの作って(……と次のを出してくる) これ作ったらみんな「わーすごい、オリジナリティある~」みたいなんだけどこれって中国の昔からのハンコ押さえなのよね、そういうとこにイノベーションのヒントがあってそれをどう作ってくかにMakeの醍醐味があると思うからそれをやってかないといけないし可能性あるでしょう。だからあたしはオープンソースとかシェアがすっごく大事だと思ってて、何でも公開してシェアしようとするんだけど。

日本オヤジ二人:脇道にそれるけど、豊胸はそれって重くない?胸が大きいと背筋に負担がきついって聞くけど……

SexyCyborg: えー、これはシリコンインプラント800mlだけど、あたしの背丈くらいだと別にこのくらいは大して問題じゃないし1000mlくらい平気で入れてる人もいるから。背中に悪影響とかするのは変な業者とかが即席でやったりする場合で全然問題ないわよ、あたしは全部で一週間くらいかけて入れて、まずこの脇んとこ切って、なんか血みたいなどろどろしたのいっぱいだして、それが安定するまで三日で、それからシリコンだんだん入れていって、ゆっくりやって無理しなければちゃんと安定するから大丈夫よ。最近ほら、make界隈でもrfidチップ入れたとかでサイボーグだ~、とか騒いでるのいるじゃん?もうあたしからすれば、そんなちっこいもの入れたくらいで何がサイボーグだよ、へへーん笑わせんなって感じ。

日本オヤジ二人:MakerFaire深圳で液晶シャッタービキニ作って、それで踊ってたよね。その胸でそこそこ重量ありそうな液晶ビキニをつけて、しかも踊ってたけどよく落ちないね、どうやってあれは固定してるの?

SexyCyborg: いやあれはかなりきつくてベルクロできつく背中で止めてるんだけど、やっぱつらいわ、特にワイヤーが走ってるから、そこのところがすごくすべるの。ちょっと汗かくともう大変なくらい。それでもすぐ落ちそうになるからかなりつらくて、踊ってるビデオを撮るときだけなんとか固定されてるけど、あれはあの時間だけね。よくタンクトップとかの透明な肩紐あるじゃん、あれもやってみたんだけれど、あれもすべって落ちるし結構つらい。だからいまのは一時的なソリューションなんだけど時間なかったし、仕方ないよね。

日本オヤジ二人:FAQで 豊胸したのは背を伸ばせないからで、中国では背の高い女の子が人気があって次が胸の大きい子だ、と書いていたけど、そうなの?日本だとチビの可愛い系が人気で、背の高い子は威圧感があるって敬遠されるからもてなくて、みんな猫背になっちゃうんだけど……

SexyCyborg: ああ、ガールフレンドにするなら中国もそうだけど、でもモデルとか女優とか秘書とか見せびらかす仕事の人は背が高いのがいちばん目立つから人気あるんよ。あたしはちっこいからいつもこうやって厚底の靴(つま先15センチ、かかと25センチというところ)はいてるけど、これがセックスワーカーみたいだって言われてMakeとかで扱えないとかいうんだけど、こっちでは全然関係ないんだから、そういう文化ないんだから関係ないわよねー。でも靴底にいろんなものを仕込む靴を作ろうと思って、最初は3Dプリンタで作る気でいたらアメリカとかにはすでにあって、ストリッパーが小物入れるために引き出しのある靴を作ってて、輸出用のやつが中国でも手に入るからこっちのmakeにも役立ったのはおもしろかったけど。でもちゃんとmakeしてる女の子がいるぞというのを見せるには目立つのが重要だし、それで豊胸もしてるので、redditとかで採り上げられてコメントしてくる連中の7割はまあ胸しか見てねーな、という感じではあるけどでもそれはそれで仕方ないし、そういうスタイルもありだし、中国というとこれまでのイメージはずっと従順でconformしてというので、それが次はコピーばっかりになったけど、そろそろ独自のスタイルとかちがったものを出してく必要があって、あたしはオリジナリティ作ってきたいしアジアで女性でMakerでみたいなのをもっともっとやってくべきだと思ってるのよ。だからアメリカこないのかとかヨーロッパこないのかとか言われるけど、んー、別にそんな興味ないから、中国でできることいっぱいあるし、それを出してきたいんだよね。別にアメリカで勉強したりしてないし、それを特にありがたいとも思わないし。深圳もその意味ですごくおもしろいし、あなたたちみたいに外に人が深圳を紹介したがるってのはすごくおもしろくなってきてる。

日本オヤジ二人:昨日送った質問の答えで、深圳で好きなところとしてBaishizhouを挙げて、クラフトビールがいいと言ってたけど、地ビールみたいなやつ?

SexyCyborg: んかそんな感じなのであんまり見所と言われてもアレなんだけどこないだドイツの知り合いがきててさ、redditとか見てよくコメントとかくれるんでいい人なんだけどさ、たまたま華強北にいたら、そいつがなんだかスーツにネクタイした連中をいっぱい引き連れてあちこち案内してるのよ、であちこちのハッカースペース見せてるっていうんだけど、ハッカースペースもいいとこ悪いとこさまざまで、かなり無内容な補助金目当てのやつとか多いし、HAX見てああいう起業させて手軽に金儲けするもんだと思ってる連中もいてそんなとこ見せてどうすんのかねー、それでおまえも深圳のハッカーのみどころをいろいろ案内してまわらないかとか言われたんだけど、あたしはツアコンじゃねーし!そういうのやらんわ。だからちゃんといいMakerSpaceもあるんだけど、なかなかつらい感じだし、どうなるのかわからないけど。

日本オヤジ二人:……えー、それでBaishizhouのビールは……

SexyCyborg: ああそうそう、いくつかいい店があるのよ、自分たちでビール作ってて。AAAとかBBBとか、それと外人のやってる店とか、なんかオーナーが気が向いたときにしか開けないけど、それはそれでおもしろいじゃない?やりたいようにやるっていう。あたしもやりたいことしかしないし。それもお金じゃなくて、別に高いバッグとか買わないしそんなもの買ってもどうしようもないし、実はみんなここで安く作ってるのよね、オリジナリティで自分の独自性をどう出すかがmakeの本当の意義だと思う。あたしの作ってるものなんて、別にまだまだ素人工作だけどそれを自分でやるってのが意味あることだし、それを商品化するとか、やってもいいけどあたしのやりたいこととはちがうよね。

Disclaimer

I'm NOT making this up! でも、メモがとても取れなかったのでこの記述はほぼすべて記憶からの再構成。一応、録音ファイルはあるがとても聞き直す気が起きない……そのため、細かいところではちがっている可能性あり。

あと、メールでの返事の中でのだいじなポイントを最後に追加:

-Please introduce your favorite movie or manga.

Bladerunner, Ghost in the Shell (攻殻機動隊). I'm a huge cyberpunk fan, recently I have been following an artist on Twitter- @sukabu89 he's so talented and really inspires me.

-Please introduce 5 or 10 your favorite places in Shenzhen, and other place.

Huaquiangbei of course, Baishizhou, I don't drink often but I do enjoy a nice craft beer. Shekou when I want some Western food. Bookcity in Futian- our huge bookstore when I need to study up on some tech and the English is a bit difficult. I spend a lot of time at home working and building things so I don't really go to a lot of places normally.

-Please message for Japanese female hackers.

Have solidarity. Stand together, help each other. This is a great strength for Asian cultures, we cooperate well. It's fine to hack and Make on your own though if that's what you prefer, hackers are often introverted and learn through self-study. Do whatever projects make you happy, not what others happen to be doing or think is important. Respect your sources- give attribution to the people that inspire and help you. Publish the source and share what you make, you'll know it's good if other people copy it and make their own. Then when you have experience you need to make something to earn a living you'll know how to make something people want.

Forigners on social media often assume my projects are from Japan, I take it as compliment because Japanese are known for their creativity and imagination. It is easy for me to be creative in China- we are just relearning this skill. But in Japan you have a wonderful challenge- to stand out in one of the most creative and technically adept places in the world. Being held to that standard will give you amazing skills.

ピケティ『格差と再分配』読んだ!本文読んだぜコノヤロー!

格差と再分配:20世紀フランスの資本

格差と再分配:20世紀フランスの資本

 この本、出ると知って、でもだれが読むんだろうと老婆心ながら心配になりました。ピケティ『21世紀の資本』便乗をねらった安易な本はたくさん出たけれど、この本は確かに便乗ではあっても(だってあの本が売れなければ、この本が翻訳出版されること自体、まずあり得なかったと思うから)、安易ではどう考えてもあり得ない。『21世紀の資本』より分厚くて字が詰まってるんだもの。そして17000円というこの値段! だれが買うんだ??!! 図書館である程度の需要が担保できればいいってことなのかなあ。

が、一応ピケティで儲けた身としては、買うのは義務だろうし読むのも義務だよなあ、と思って一応献本もされたけど、自分でも買いました。で、ヒイヒイ言いながら読みましたよ。もうほとんどページを機械的にめくり続ける世界だけど。で、ついについに、年内完読いたしました。本文だけだけど。この先付録も見るなんてありえなーい!あと、すべてのページの3分の1を占める注もほとんど見てない。でも完読だぜ、どうだ、コノヤロー!

その価値はあったかというと、まああった。ただし、本のほとんどはフランスの細かい統計的なデータの説明、それを長期的に見るにあたって、細かい制度的な改訂をどう補正したか、といった記述。

 そして結論は、21世紀の資本のフランスに関する部分で語られたものとだいたい同じ(というか、本書を元にして『21世紀の資本』が書かれたのであたりまえだけど)。フランスの購買力は、20世紀を通じて5倍くらいになった。で、格差は大きかったものが激減し、でもそれが70年代くらいからまた大きくなった。変化の原因は、労働所得はあまり変わらず、むしろ戦争とインフレによる資本破壊と、そしてその後の平和と低インフレと相続による資本増大に伴う、資本所得の変化である、ということ。そして、税金を通じた再分配が格差解消に大きく貢献したということ。だから経済発展すれば格差は自然に解消、というものではないこと。

最後には、格差と経済成長の関係について少しコメントがあるけれど、基本はまだはっきりしない。でも、格差が小さい時代のほうが大きな成長があったのは事実。また社会の安定性にはどうも関係しているようだ。21世紀の現在、格差は19世紀の水準には達していない。でも今後悪化する可能性はある。データも不足しているので、もっときちんと研究できる下地を作りましょう、というのがざっとしたポイント。

 これを読むと『21世紀の資本』が(あれでも)読者に配慮していろいろ読み物的なおもしろさを考えていたのがわかる。バルザックの小説をネタにした話やフォーブス長者番付を引き合いに出した分析は、こっちの本には出てこない。『21世紀の資本』は、読み物的な楽しさも狙ってそういうのを入れたんだろう。こちらは、もうずっと真面目。経済学者たちは(できればきちんと買って)読むべし。そうでない人は……まあ是非読めとすすめるのはためらわれるところ。でも、読んで損はしない。ホント、「すばらしい本だから精読すべし」と言ってあげたい気持ちはテンコ盛りなんだけれど、さすがに無理!でも本屋で手にとって、カールしながら最初と最後を読むのがいいんじゃないか。

トマス・シェリングの思い出(なんてえらそうなものではないが)

トーマス・シェリングが死んでしまった……といっても100歳近かったのか。大往生ですねー。日本では名著『ミクロ動機とマクロ行動』の邦訳がついに出て、高齢の2016年経済学書ベストみたいなのに、入れるべきかどうかちょっと悩んでいるところ。

ミクロ動機とマクロ行動

ミクロ動機とマクロ行動

個人的には紛争本よりこっちのほうが気に入っているのだ。

さて昔一度だけシェリングとはメールのやりとりをしたことがある。ヤバい経済学のレヴィットがシェリングゲーム理論の講義を受けていた、という話をブログに書いていて、それが実にすばらしかったという一方で、ノートに書いた内容が断片的な単語ばかりで具体的な中身はあやふや、というものだった。で、その中に、トイレをランダムに流す、というのがある。

freakonomics.com

だれかが(望月衛だったかな?)レヴィット本人にメール聞いたところ思い出せないといわれたそうな。んで、ずいぶん気になって、思いあまってシェリング自身にメールしてみた。すると、なんと返事がきた。一言だったけど。

f:id:wlj-Friday:20161215113948j:plain

知らね、とのこと。

しかし考えて見れば、このときすでに90歳前後か。よくまあ返事くれたなあ。

ということで、もしどなたか、トイレをランダムに流す、という話がゲーム理論の説明や応用に登場する可能性に思い当たることがあったら、是非ご教示いただければ幸いです。

『ザ・ビーチ』初めて通して見たけど、恐れていたほど悪くないが、すごくよくもない……

あちこちのバックパッカー宿にいくと一時は必ず一階のレストランバーで上映されていた映画の一つ『ザ・ビーチ』、断片的にはいろんな部分を見ていたけど、通して観たことなかったので、いつか観ようと思っていた。で、数日前に思い立って、今日初めて(アマゾンプライムの無料で)鑑賞。

結構罵る人が多かったので、期待を下げて観たせいもあるだろうけど、そんなに悪くはなかった。途中のリチャード君の妄想とか、ちょっと脈絡ない感じだし、最後は確かにあまりに拍子抜け。おまえらあの後で平気でおうちに帰って普通に暮らせるのか、というのはやっぱあるよなー。あの帰結を読んでいたタイのお百姓さんはあまりに心理戦に卓越しすぎているし…… ついでに、これは完全に趣味の世界だけど、あの楽園がぼくには三日で飽きそうであまり楽園に思えない……

でもまあ、手堅くまとめた感じではないでしょうか。これから原作も読んでみるが(こちらも邦訳が端折りすぎとのアマゾンレビューがあってどうしようかと思っているけど、アレックス・ガーランドはそこまで繊細な文を書くわけでもないので、多少端折られていてもまあいいか、という気はするし……)

でも二〇〇〇年の映画か。オール・セインツのPVはやたらに観てて、なんかもっといい歌だったように思ってたけど、いま聞くとしょせんオール・セインツで結構ショボいなあ。


All Saints - Pure Shores (Official Music Video)