- 作者: オリ・ブラフマン,ジューダ・ポラック,入山章栄,金子一雄
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/02/15
- メディア: 単行本
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乱雑なほうがインスピレーションやひらめきがうまれやすい、秩序ばっかり追及しないで、いろんなところに異分子をいれてみたり怠け者をいれてみたりひねくれ者や反抗分子を入れたりすると、新しいアイデアを出してくれたり新鮮な視点をだしてくれたりしますよ、という本。
ふーん。それで?
それだけ。
……くだらねー。
いや、この主張がまちがっているというのではない。基本的にはその通り。でもそれっていくらでも言われてきたことで、いったい何が目新しいんですか? かく言うぼくは多くの組織で、ひねくれ者で目新しいものを掘り出してくる役目なので、そういうのが必要と言われると嬉しい。でもさ、ぼくみたいな連中ばっかではダメなんじゃないの? それをまとめるとか、いったんぼくみたいなのが変なネタを掘り起こしてきたらそれに向かってガシガシ進むよう人を組織するとか(ぼくは、なんか自分で答が見えてしまうと急激に興味が薄れるのだ)、そういうこともしなくてはいけないでしょう。そういうバランスはどう考えれば良くて、「山形仕事しないで遊んでるんじゃないの」という組織内の白い目をどうコントロールして山形も実は有益な仕事をしてるんだとみんなに納得してもらえばいいのかとか、そういう手法がいりますよね。それにはどうすれば?
また、アインシュタインが成績も悪かったし郵便局の仕事ぶりもアレだったことを述べて、でもアインシュタインは相対性理論を考案してすごかったよねー、だからそういう役に立たなそうな人間を買っておくのはいいことなんだ、というんだ。でも、学校にとっては、そしてさらに郵便局にとっては、アインシュタインは最後まで貢献してないよね。社会全体で見れば、アインシュタインがそうやって養ってもらえたのはいいことかもしれないけど、郵便局がそんな面倒を見なければいけない義理はない。郵便局の管理職としてはどうすればいいんだろ?
そこらへん、ほとんど書いてないんだよねー。バランスがだいじです、とは言うし、それがむずかしいところだ、とは言うんだけれど、本書ではとりあえずカオスを入れるところまで。例の、バスケット試合中のゴリラが見えない話とかで、ある目標にみんなが集中しすぎると、目標とは関係ない重要なものを見落としますよ、といった話を並べて、だからよそ見をして集中してない異分子は大事ですねー、と言ってそれで終わり。
人によっては、なんか対処法が書いてあるように思うかもしれないんだけど、ぼくはまともなことは書いてないと思う。
そして、ぼくは本書冒頭に出てくる例にあきれた。かつてヨーロッパ中世は暗黒時代と呼ばれていた。でもそこにペストがやってきた。これでヨーロッパの人間はばたばた死に、人口の八割が死んだりするところもざらで、ほとんど絶滅寸前。
でも、ペストがやってきたおかげでこれまで人々を抑圧してきた教会の連中もいっぱいくたばってくれた。だから新しい技術や考え方が発達する余地ができて、おかげでヨーロッパ文明はその後大発展をとげました。すばらしい。ペストこそヨーロッパ文明――ひいては人類文明を発達させたのです。ペストはすばらしい! だからみんなも組織にペストを入れよう!
待て待て待て待て待て。ちょっと待て。
あくまでアナロジーだというのはわかるけど、そのペストってヨーロッパの人口の八割を殺したとか書いた次のページで、ペストはすばらしい、みんなペストを組織に入れよう、と言い出すのってあまりにひどいでしょうに。そんな組織を壊滅させかねない代物を安易に導入するわけにいかんでしょう。特にこの本、そのペストをどう抑えるのかまともな方法も提案できてないんだし。そんなこともわからないらしき著者の提言が、まともなわけはないとぼくは思うし、実際まともなものは何も出ていない。これではねえ。そして著者にこのペストの話を聞かされた米軍のえらいさんが「そうか、うちの軍にもペストを入れろということか」と言っていろいろ方策を講じ始めたというんだけど、あんた大丈夫ですか。米軍、ペストなんか注入されて大丈夫ですか。