Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 2

Against the Day

Against the Day


承前

さて少しさかのぼって三年ほど前のクリーブランド。近くの研究所で、なにやら教授二人が、地球の運動がエーテルと光速度に与える影響を実験しようとしているところへやってきたのがメルレ・ライドアウト。新聞でこの実験について読んで、そのもーリー博士への紹介状をinconvenience号エンジン発明者ヴァンダージュース教授に書いてもらって到着してみると、そこにはなにやら得たいの知れないエーテル主義者たちの集まり。同時に町はギャングとして指名手配されているブリンキー・モーガンの行方で話題沸騰中。しばらくうろつくうちにメルレの中で両者がごっちゃになり、モーガンがモーレー博士の分光器で分割された片割れだとか何とか変な妄想につかれるが(「モーレーとモーガンは名前の前半が同じだ!」等々)やがてマイケルソン・モーレーの実験によりエーテルがどうも実在しないらしいということになる。チャンドラセカール*1がそこで「いや実験でつきとめられなかったことこそエーテルの不可知性を示しその神性をあらわしているのだ」とか得たいの知れない理屈をこねるがジリ貧で、同時にモーガンが逮捕されて話はおしまい。

 その後メルレはカメラに夢中になって、かれの奥さんが偶然にサーカス奇術師の助手としてスカウトされてそのまま駆け落ちした話になって、かれはいま娘ダリアといっしょに住んでいる。実は二人で前章でinconvenience号の砂袋攻撃にあったり、その後写真を撮りに来たりしていた。二人はコロラドの農場で写真の溶液をまぜたりして一方で錬金術みたいなのにも手を出して、たまに訪ねてくる火薬と錬金術(のアンチ賢者の石)に興味を持つウェッブなんかと話をしたりしつつ数年暮らしていた。


そのウェッブは爆発物に関心がある一方で、資本主義の興隆とほぼ同時期に錬金術が衰退したように見えるのには陰謀があると思っていて、資本主義こそは錬金術のアレではないか、したがってアンチ賢者の石ができれば資本主義が破壊出来るのでは、なんてことを考えている。

さてコロラドでは7月4日の独立記念日に花火ではなくダイナマイトで気勢をあげるのだけれど、ウェッブはなにやら帝政ロシア配下のフィンランドを追われてきたヴェイッコ(もちろんアカ)とつるんで、爆破テロの対象をあれこれ思案しているところ。あれこれ考えて(これが長いんだ)鉄道を爆破。



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*1:これって、あのチャンドラセカール、なのか?!?