Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 16

Against the Day

Against the Day

(承前

一方、メキシコのほうではあれこれ(前にも書いたがメキシコのエピソードは今ひとつ興味が持てない)。メキシコではそろそろ独立運動が出てザパティスタが出没し始めて、アメリカ政府は国民に帰国勧告を出したりする。フランクは、機関車を改造して丸ごと爆弾にするという発明をして壮絶な政府軍攻撃を展開、さらにメキシコ南部に漂う。革命派に手を焼いているドイツ人農園主に手を貸したりしているが、そこの農園で光る虫だらけの木を見るうちに、不思議な幻覚に襲われる。それがメキシコ革命のビジョンだということに気がついて、かれはメキシコを離れてデンバーに戻ることにする。デンバーで友人たちにでくわしたフランクは、近くの労働運動を支援することに合意。

スカースデール・ヴァイブは、何やらリゾートで演説して、幽霊を見るがもうそれを怖がらなくなる。そして非常にまずい暗殺計画が失敗しかけたときに、身内の人間に射殺されてしまう。

一方、フランクたちが支援する労働運動に対し、民兵たちが雇われて攻撃を開始。アメリカの労働運動史上で一、二を争う残虐な大虐殺が展開される。フランクはガールフレンドと結ばれるけれど、人々の苦境を見捨てられず、彼女を置いて虐殺の現場へと戻る。


その夏、ヨーロッパは猛暑。Inconvenience号は予算も打ち切られ、手元不如意ではあったが、ヨーロッパに向かう。パグナックス(読書犬、です)にはいつの間にか彼女(犬、です)ができている。かれらがサハラ砂漠上空を飛んでいるとき、怪しい別の飛行船があらわれて急接近して消える。どうも太陽の向こうにあるという反地球アンティチトンからやってきたものらしいぞ! 太陽がレンズの役割を果たして、向こうのものが実にはっきりと見えたようだ。そして反地球にやってきた一行は、そこでボルシャイア・イグラ号(ただし改名)に遭遇。ボルシャイア・イグラ号は、いまや戦争の悲惨を見て、慈善活動に乗り出している。それで名前も変え、空からレンガを落とすかわりに食料や服を落としている。

両者がともにジュネーブに着くと、ロサンゼルスから仕事の話がきている。向かう途中でロッキー山脈を越えると、空飛ぶ少女たちの大群に遭遇。そこには、Inconvenience 号乗員の運命の恋人たちもいる。なんでもこれはエーテル主義者の友愛会で、エーテルの中を走る大波に乗って波乗りをするように運ばれるんだとか。そのためにスペクトル抵抗やエーテル補正済みレイノルズ数も計測して安全に飛べるようになっている! そして全身につけた小さな大量の羽にそのデータが送られて、それが最適なエーテル浮力を出せるよう調整するんだって。

さてついてみると、仕事の話はまったくのでたらめ。うろうろするうちに、あれやこれやで、リュウくんの案内によりメルレとロズウェルが変な発明をしているのに遭遇。撮影したものを三次元で完全に投影できる映像装置!

リュウは、ロサンゼルスで立派な探偵事務所を開いてセクシーな女の子三人を使ってるのだ。ある日、かれの元に、失踪したルームメイトを捜して欲しいとの依頼がくるが、その場所に出かけると、その依頼主も姿を消している。あれこれ調べるうちに、メルレとロズウェルと接触。実はかれらの発明した装置は、写真をもとに未来も過去も再現できる代物。かれらはそのためにハリウッドに負われているとか。その機械を使って失踪した女の子の行方を探ると、あれやこれやで銃撃戦で悪人カップルがどうのこうのでからくも助かり云々。

リュウくんは、メルレたちの機械を使って自分を捨てた妻のその後を眺めて感傷に浸る。一方、メルレは娘(養女だけど)ダリアの運命を探り、彼女がいまやパリにいることをつきとめるのだった。彼女の映像を眺めるうちに、向こうからは見えないはずの映像がメルレに向かってほほえみかけ、そしてメルレは義理の娘との不思議な交信が起こるのを感じる。


(第四章おしまい)



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