Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 10

Against the Day

Against the Day

(承前


梅木ちゃんと分かれたキット、ようやく当初の目的だったゲッチンゲンに到着する。そこにはTWIT配下のヤシュミンとその監視役の二人組がうろうろ。キットはゼータ仮説の証明を見せるといってヤシュミンを部屋につれこむが、彼女は何やら扉のように見えて扉でないがでも通路ではあるものを通って気がつくと別の場所にいる。ゲッチンゲンはリーマン主義者がうろうろする一方でクロネッカーカントールの論争がどうしたこうしたでワイエルシュトラウス関数だのカントール連続体だのの信奉者もあれこれでわけわかんなくなってます。


その頃セントペテルスブルグではデモ隊への発砲なんかがあって、社会主義運動がいやがうえにも高まりつつあり、日露戦争の敗北その他でロシアは大混乱。逃れてきた連中がゲッチンゲンにも流入中。ヤシュミンはギュンターという数学者といい仲になっている。かれはゲッチンゲンで数学の博士号を取ろうとしているが、ゲッチンゲンでは数学博士号をとったら広場の噴水の女の子像にキスする伝統があるとか。ギュンターとキット、ヤシュミンをめぐって少し険悪になるがすぐに意気投合。ヤシュミンはヒルベルトの講義でゼータ関数のゼロについて別の固有値があるのではとか何とか(この世のものならぬ別次元の話ですな)。


ところ変わってロンドンでは、リュウくんがTWIT本部でうろうろしている。中央アジアで何事か起きているらしいとのことで、保険屋のふりをして怪しい家に入り込むと、そこには無線のかわりに可燃ガスの圧力を使って情報伝達を行う連中。そしてその机の上に怪しい図面が。なんかこれはシャンバラの地図ではないか、とこっそり写真をとって出てくる。


話はすぐにゲッチンゲンのキットに戻る。ある日かれは、ヴァイヴからの送金が打ち切られているのに気がつき、自分の利用価値がなくなってそろそろ殺されるのではないかと思案。ヤシュミンに相談して、TWITに雇ってもらうことになる。しばらくして、ゼリードーナツの変装をした人物(ゼリードーナツの格好をしていたら、見た人は自分の気が変になったと思ってだれにも言わないから完璧な変装なんだって)に接近される。その後ヤシュミンから、シャンバラの話をうちあけられる。彼女の養父ハーフコート大佐が現地でどうにかなっているらしい。そしてキットはTWITから、カシュガルに赴いてハーフコート大佐と接触し、かれの持っている情報を入手してこいと言われる。ロシアの革命さわぎで通信が絶たれているからとのこと。そうすればキットはヴァイブからも姿を隠せるというわけ。このミッションを偽装するため、まずはヤシュミンと駆け落ちしたと見せかけて町を出ろと言われる。二人はギュンターとお別れに人気のない博物館を訪ねるが、実はそこの礎石も超立方体、四元数の呪縛がかかっているのだった。


話はアメリカ西部に移る。キットの兄フランクが相変わらずのたくたしていると、ギュンターがそこに登場する。(このアメリカ西部系の話の流れはあまり興味が持てないので端折る)。


リーフはちょうど、アルプス山脈でスイス・イタリア間の鉄道トンネルを掘っているところ。でもいたるところで温泉の噴出が出て工事は遅々として進まない。労働者たちの中にはアナキスト社会主義者たちがたくさんいるが、トンネルの中は中立地帯であり時間からも自由だという迷信がはびこっていて、それにしたがってみんなうまくやっているのだった。そこへある日、アメリカ時代に知り合いだった酒場娼婦ルペルタが、イタリア貴族に囲われてやってくる。二人はすぐにまた同衾。トンネル内には穴がたくさんあるがそこには謎のタッツェル虫なる緑の血の人食いイモムシみたいなのがいるのだ。同僚がそいつに襲われるのを助けようとしたところ、イモムシが突然リーフに話かける。


さてキットはヤシュミンと偽装駆け落ちに出る。いきなり中央アジアに向かうのは不自然なので、まずはかつてリーマン最後の旅の足跡をたどって南に向かった。フランクフルト経由でリーマンの墓に詣でてから、ヤシュミンは自分が何か別次元に出る謎の力を持っていることを打ち明ける。今回の偽装駆け落ちは、彼女をゲッチンゲンから出してその力を発揮させるための口実でもあったのだった。二人はスイスにたどり着いたところで、キットは兄リーフと再会。リーフは、ルペルタのパピヨン犬がバター犬だと思って自分のナニをなめさせようとしてかみつかれる。ヤシュミンとルペルタ、キットは、リーフと降霊術をして父親を呼び出す。ヤシュミンはそこでキットと分かれる。

ロンドンでは、リュウはRenfrewとWerfnerが同一人物であることをつきとめる。ある日、TWIT関係者が一斉に姿を消す。リュウはそこを辞して、また普通の探偵に戻ろうと決意する。

(第三章おしまい)



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