岸田秀『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』:あきれた。こんなトンデモ妄想垂れ流し読んで目が穢れたぜ。

黒いアテナをネタに、岸田がどうしようもない歴史妄想を垂れ流すだけの、ホンッと情けない本。なんでも、アフリカではみんな黒人だったんだけど、その中に白人が生まれたので差別されちゃって、それでその人たちはアフリカを逃げてヨーロッパにでかけたんだって。だからいまの白人はその時のうらみで、仕返しに黒人差別するんだってさ。

あほくさ。


「黒いアテナ」は、エジプトもギリシャもあれもこれもみんな黒人が作った文明で、そうでないというやつはみんな(意識的か無意識的かを問わず)人種差別屋だというトホホな本……ではなく、ギリシャ文明も独自でいきなり成立したのではなく、アフリカなどからの影響を受けつつ成立したものだよ、というもの。一部ではトンデモ扱いされているけれど、でも一応、それなりに研究の体裁にはなっていて、反論本とかも出ていてまあまあ学問的な議論の俎上には載る。でも岸田は、トンデモ解釈にしがみついたうえ、その反論本を持ってきて、その反論が変だ、こんな反論をするのは白人が焦っているのだと思う、証拠はないけどオレがそう思うんだから反論は認めない、みたいなのをひたすら書き連ねる。

そして、なんでも「いい加減に読んでいい加減にまとめた」で言い逃れ、「オレの説も証拠はないけどあいつらの説も証拠はないから同格」といったどうしようもないシロモノ。しかもアーリア説(それもヒトラーゲルマン民族優秀説に使った邪説レベルのもの)なんかを真剣に検討するあほさ加減。アーリア説とあんたの説のどっちに説得力があるかって、どっちもねーよ。

歴史認識のお粗末さについてはこのブログ「gurenekoの日記」を参照。経歴詐称がばれてから、岸田秀ってこんなことになってたのね。史的唯幻論って、ちょっとした思いつきのホラ話で冗談でやっているんだと思ったら、こんな大まじめだったとは。

ちなみに極東ブログは本書について

バナール説については、普通の知識人なら知っておくべきなので、それがチートシート的に読めるという程度で本書は読んでおいていいと思う。繰り返すが、岸田の理解でバナールの論争とかに突っ込むのはだめだめ。」

とのことだが、突っ込めないならチートシートの意味ないじゃん。ちなみに、バナール説なんか知る必要ないと思うし、聞かされても「ギリシャ文明がエジプト起源? そういう面もあるかもしれませんねえ。それがどうかしましたか」で顔色一つ変えずに流すのが本当の知識人だと思う。バナールの本は整理が悪いし、訳書(原書も)をまじめに読もうとするとすごく疲れるし、がんばって読む価値はありません。



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