ホバーン『ボアズ=ヤキンのライオン』:すばらしい。

ボアズ=ヤキンのライオン (ハヤカワ文庫 FT (69))

ボアズ=ヤキンのライオン (ハヤカワ文庫 FT (69))

読もうと思ってずっと本棚の隅にいたこの本、南アフリカに持ってきて読んだけれど、すばらしい。ヨハネスブルグの町をこの高層ビルから見渡すと、ライオンは確かにいる。いるのだけれど、どこへ行ったのだろう。地図を見れば居場所がわかるだろうか。でもその地図はだれが。ぼくの作る地図には、ライオンがいないのだ。車輪にかじりつくライオン。王さまに殺されるライオンが。

本書はそういう話なのだけれど、読む人みんな、自分がかつて持っていたライオンを思い出すだろう。そしていま自分が持つ地図の危うさにふと思いをはせることだろう。地図はもうない。ライオンはいた。いる。いっこうに見つからないけれど、でもいる。

短いけれど、流し読みはできない本なのでこの一冊でハリポタ全巻を読むくらいの時間をかける用意はいるんじゃないか。こんどリドリー・ウォーカーも読んでみようかなあ。



クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata is licensed under a Creative Commons 表示 - 継承 3.0 非移植 License.