ケインズ『平和条約改定: 続「平和の経済的帰結 (1922)」』仕掛かり:結局やっちまった

しばらく前に、ケインズ『平和の経済的帰結』を全訳した。

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もちろんご存じと思うけれど、これは第一次世界大戦後に、イギリス外交団の一員としてヴェルサイユ会議に参加したケインズが、あらゆるものをドイツからはぎとって、しかもその上に賠償金をしこたま払わせようとする連合国たちの魂胆に怖気をふるい、席を蹴るとともに発表した告発文書だ。これはベストセラーになり、ケインズはいきなり悪名を馳せた。

で、最近忙しくなったもので、当然ながら余計なことにいろいろ手を出してしまい、あれこれ見ていると、この『平和の経済的帰結』には続編があるという。それがこの The Revision of the Treaty (1921) だ。

www.gutenberg.org

で、いつもながら中身もろくに読まず、『平和の経済的帰結』を訳した身としては続編も一応やっつけるのが仁義だろう、と思って取りかかった。1/3ほどが終わったものが以下のpdf。

平和条約改定: 続『平和の経済的帰結 (1922)』

なんだが……つ、つまらん。

基本的には、前著でさんざん罵倒したヴェルサイユ条約のその後の経緯と、それをどうすべきかというのを論じたもの。非常に時事的な論説であって、いまのぼくたちが読んで何か得られるかというと……あまりない。歴史的な意義とケインズが書いたということだけにしか意味がない文書。

ということで、なんかこの先を全部訳すかどうかは、かなり怪しい。特に補遺にあるいろんな条約や協定や通達の原文は絶対訳さないと思う。

とはいうものの、歴史的な経緯からいえば、この第一次世界大戦の賠償金問題は、まさにナチスドイツの台頭につながる決定的な要因ではあって、それがどのように形成されていったかは、ある意味で重要ではある。ただそれが本格的に問題になるのは、もう少し後の大恐慌をはさんだ後の話であって、この文献に直接関連する部分は小さい。

このドイツ賠償金問題、それをあまりに巧みに処理しすぎたヒャルマル・シャハトの恐るべき手腕、そしてそれがナチス台頭にとって持つ意味については、トゥーズ『ナチス 破壊の経済』を参照してほしい。

ナチス 破壊の経済 上

ナチス 破壊の経済 上

ナチス 破壊の経済 下

ナチス 破壊の経済 下

ということで、他にもいろいろ仕掛かり品はあることだし、たぶんこれはこの先、当分放置されると思う。同じケインズなら、結構できあがっている説得論集とか人物論集とか(これは結構楽しい)、まったく無意味にやりはじめた処女作のインド経済本とかのほうが先に終わりそうだ。続きやりたい人は是非どうぞ。pdfと同じディレクトリにtexファイルが入っているので。

 

それより先に、仕事しないと……

付記

とかいって逃避しているうちに4章まで終わって6割くらい仕上げてしまったよ。なんか結局やってしまいそうだ。(9/17)

結局やっちゃった。

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