- 作者: チェ・ゲバラ,Ernesto Che Guevara,甲斐美都里
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
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さて新訳とのことだが、旧訳がそんなに悪かった印象もないので一部比較してみた。カバー見返しにある訳者略歴は、ものすごく長いのだが、外資系企業の秘書室や総務部にいたとか陶磁器の修理をしているとか、ゲバラとも翻訳とも無縁の人だということしかわからない。それでも上手で訳が大きく改善されたなら特に文句もないのだが……
が、この新訳はやたらに愚直で、関係代名詞は後ろから遡って訳すという昔の受験英語の英文和訳的な素人っぽい翻訳となっている。趣味の問題もあるが、訳のなめらかさでは驚いたことに35年前の五十間訳のほうがずっと上。ただし原文はあまり長文のレトリックを多用していないので、全体の読みやすさにあまり大きく影響はしていない。
また翻訳の原典として何を使ったのか明示されていない。奥付から見ると、どうも英訳からの重訳らしい。旧訳はスペイン語からの訳で、英訳も参照したとのこと。また旧訳と比べるとゲバラが原著につけていた、「要修正」「これ加筆」といった書き込みが反映されているのが追加分。逆に、三一新書版にあった「キューバ革命:例外か〜」という論説が削除されている。まあこれは、三一新書のほうのサービスなので仕方ないのだが、正直言ってゲバラの追加コメントは大したものではないし、まとまった追加論説のほうが効用が高い。
恵谷治の解説は鋭い視点だがいかんせん短く、一方で旧訳の情熱的で詳細な訳者解説の迫力はない。映画をあてこんだ新訳なのはわかるが、あまり新訳した甲斐がないように思う。とはいえ、ことさら劣化しているわけでもないので、この訳で読んでも大きなデメリットはない。が、旧訳が安く買えればそれで充分以上。
まだrejectされてはいないが、載りますかどうか。<-- 載った。
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