栗岩『モリで一突き』:楽しげですばらしい青春記。

モリでひと突き

モリでひと突き

趣味でモリ突き式の魚取りにはまり、それが講じて魚の研究者になった著者の、モリ漁一代記(の発端部分)。大学のサークル活動で、ふとしたきっかけからモリ漁にはまり、そのまま魚を求めて仲間とあちこち魚を捕りにまわった様子をひたすら描くだけ。これをイントロに魚の研究の話にでもつなげるかと思ったらそれもなく、とにかく楽しい魚取りの話が続く。無謀さと発見と仲間との交流と、本当に純粋な楽しさを描いた本で、つまらない文明論的な説教なんかもなく、ひたすらすがすがしい。そういう説教じみた邪心がないから、読んで「あ、おれもこういうくだらないことに情熱を燃やした時期があったなあ」と涙が出そうになると同時に、これまで何も興味なんかなかったモリ漁を「これおもしろそうだから機会があったらやってみたいなあ」と思わせる。ほーんといい本で、タイミングさえ合えば紹介したいところだったんだが……残念。



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