朝日新聞書評

グリック『インフォメーション』:意味を求める人間と、自走する情報のちょっと悲しい別れ

インフォメーション―情報技術の人類史作者: ジェイムズグリック,James Gleick,楡井浩一出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2013/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (24件) を見る 人は常に情報に支配されてきた。遺伝子に刻まれ…

鈴木『なめらかな社会とその敵』&ヒース『ルールに従う』:社会の背後にある細かい仕組みや前提を明らかにする野心的な試み…… but you ain't see nuthin' yet.

なめらかな社会とその敵作者: 鈴木健出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2013/01/28メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 299回この商品を含むブログ (47件) を見るルールに従う―社会科学の規範理論序説 (叢書《制度を考える》)作者: ジョセフ・ヒース,瀧澤弘…

カヴァン『アサイラム・ピース』:感傷的ながらドライさをもたらす、囚人と看守の共犯関係とその諦念。

アサイラム・ピース作者: アンナ・カヴァン,山田和子出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2013/01/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 410回この商品を含むブログ (30件) を見るアンナ・カヴァンの作品は、しばしばカフカ的だと評される。抽象的で正体不…

ドレズナー『ゾンビ襲来』:ゾンビ相手の外交理論、人間にも通用するか?

ゾンビ襲来: 国際政治理論で、その日に備える作者: ダニエルドレズナー,谷口功一,山田高敬出版社/メーカー: 白水社発売日: 2012/10/24メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 3人 クリック: 455回この商品を含むブログ (24件) を見る従来の人間ゾンビ関係は…

2012年の3冊

田中浩也『FabLife』 ソローキン『青い脂』 初沢亜利『True Feeling』 FabLife ―デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」 (Make: Japan Books)作者: 田中浩也出版社/メーカー: オライリージャパン発売日: 2012/06/09メディア: 単行本(…

三浦『シビリアンの戦争』:シビリアンコントロールは本当に有効か?

シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき作者: 三浦瑠麗出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/10/19メディア: 単行本購入: 13人 クリック: 615回この商品を含むブログ (14件) を見る本書は、ぼくたちの多くが慣れ親しんでいる軍や戦争に関する基…

関『東日本大震災と地域産業復興』: 震災復興の歩みから日本産業の将来像を見通す

東日本大震災と地域産業復興 II: 2011.10.1~2012.8.31 立ち上がる「まち」の現場から作者:関 満博発売日: 2012/10/15メディア: 単行本東北震災以来、もう二年近く。ニュースだけ見ていると、国としての初動の遅れ、空疎な文明論を並べて増税の口実にされただ…

三沢他編『電波・電影・電視』:意外と不十分なテレビ中心のアジアメディア史。

電波・電影・電視―現代東アジアの連鎖するメディア作者: 三澤真美恵,佐藤卓己,川島真出版社/メーカー: 青弓社発売日: 2012/10メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 195回この商品を含むブログ (2件) を見るテレビ、ラジオ、映画、レコードなどのメディアは、…

田崎『やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識』

やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識作者: 田崎晴明出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2012/09/27メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 22人 クリック: 703回この商品を含むブログ (28件) を見る昨年の東電福島原発事故による放射線…

ソローキン『青い脂』:お下劣瞬間ゲイ小説で歌い上げる文学の確信

青い脂作者: ウラジーミル・ソローキン,望月哲男,松下隆志出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/23メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 6人 クリック: 393回この商品を含むブログ (54件) を見る昔の人は、たかが小説のヤワなエッチ描写ごときで…

冨田『ロシア宇宙開発史』:アメリカとはまったく別の技術の系譜

ロシア宇宙開発史: 気球からヴォストークまで作者: 冨田信之出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2012/08/31メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 383回この商品を含むブログ (3件) を見るロシアの宇宙技術は、テーマとしてはマニアックながら、アメリカ…

西田『新しい刑務所のかたち』:PFIを口実にした刑務所自体の改革

新しい刑務所のかたち -未来を切り拓くPFI刑務所の挑戦- (ShoPro Books)作者: 西田博出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション発売日: 2012/06/28メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 113回この商品を含むブログ (1件) を見る十年以上前、本書のテーマ…

三橋『昆虫食文化事典』:昆虫食そのものから、それをとりまく古今の文化まで網羅した力作。

昆虫食文化事典作者: 三橋淳出版社/メーカー: 八坂書房発売日: 2012/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 206回この商品を含むブログを見る虫と言ってもしばらく前に本欄で書評の出た快著『「腹の虫」の研究』は観念としての虫の話だったが、こちらは本当…

山崎『瓦が語る日本史』:瓦のマニアックな話だが、そこからこれだけのものがよみとれるとは!

瓦が語る日本史―中世寺院から近世城郭まで作者: 山崎信二出版社/メーカー: 吉川弘文館発売日: 2012/06メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 183回この商品を含むブログ (3件) を見る瓦なんて似たり寄ったりと思ったら大間違い。東大寺や法隆寺の修復だけ見て…

片岡『円のゆくえを問い直す』:異様な密度でアンチョコにさせていただきます。

円のゆくえを問いなおす―実証的・歴史的にみた日本経済 (ちくま新書)作者: 片岡剛士出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/05メディア: 新書購入: 76人 クリック: 1,625回この商品を含むブログを見る異様な密度の新書。企業が円高で悲鳴を上げる中、一面的…

豊川『群像としての丹下研究室』:「構想力」の具体的な中身を分析したおもしろい本

群像としての丹下研究室―戦後日本建築・都市史のメインストリーム―作者: 豊川斎赫出版社/メーカー: オーム社発売日: 2012/05/09メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 320回この商品を含むブログ (6件) を見る建築家を語る本は通常、造形デザ…

ウォルツァー『政治的に考える』:理念と現実のせめぎあい

政治的に考える―マイケル・ウォルツァー論集作者: マイケルウォルツァー,デイヴィッドミラー,Michael Walzer,萩原能久,齋藤純一出版社/メーカー: 風行社発売日: 2012/04メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 400回この商品を含むブログ (5件) を見るいま、現…

コリアー『収奪の星』

収奪の星―― 天然資源と貧困削減の経済学作者: ポール・コリアー,村井章子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2012/03/20メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 149回この商品を含むブログ (8件) を見る資源は途上国にとって諸刃の剣だ。収入は増えるが、利権…

瀝青会『今和次郎「日本の民家」再訪』

今和次郎「日本の民家」再訪作者: 瀝青会,中谷礼仁,石川初,菊地曉,福島加津也,御船達雄,清水重敦,大高隆出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2012/03/25メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 166回この商品を含むブログ (12件) を見る今和次郎の名著『日本の民家…

ウォールセン『バイオパンク』:新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本。

バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!作者:マーカス・ウォールセンNHK出版Amazon 遺伝子組み換え、と聞いただけで怖じ気づく人は多いが、その恐ろしい遺伝子組み換えを、いまやそこらのホビイストが平気で始めている。本書はその動きや遺伝子組み換えホビ…

ヒース『資本主義が嫌いな人のための経済学』:不勉強な左派と図に乗った右派の両方をくさし、経済学の価値を認めるべきところでは認めろと主張するえらい本。

資本主義が嫌いな人のための経済学作者: ジョセフ・ヒース,栗原百代出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2012/02/09メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 834回この商品を含むブログ (15件) を見る2008年金融危機に始まる世界不況、さらには震災後に…

パルヴェーズ『イスラームと科学』:イスラムの現状批判とともに、もっと広い科学と宗教や規範の関係を考えさせられる。

イスラームと科学作者: パルヴェーズフッドボーイ,植木不等式出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2012/01/31メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 346回この商品を含むブログ (6件) を見るイスラム圏の科学はひどい状況にある。中世には、停滞するヨーロッパ…

エスピン=アンデルセン『平等と効率の福祉革命』:新しい福祉社会の見取り図を提案する希有な本。ただ監訳者の我田引水解題はないほうがまし。

平等と効率の福祉革命――新しい女性の役割作者:イエスタ・エスピン=アンデルセン岩波書店Amazon福祉の議論は公共頼みになりがちだ。医療も高齢者も育児も失業も国がもっと金を出せ――でも、家庭や企業も福祉をかなり提供している。そのバランスを見ないとだめ…