オーウェル『1984年』全訳完成

Big Brother is Watching YOU!!!

2023年の年頭に宣言した通り、オーウェル『1984年』の全訳をあげました。

genpaku.org

html版と、pdf版があるので、まあお好きに。当然、クリエイティブコモンズなので、自由にお使いください。個人的にはいま出版されているどの翻訳よりもいいとは思うが、それは趣味もあるでしょう。商業出版したいとかいうところはあるかなー。なければ自分で電子ブックでも作って売ろう。

追記:商業出版したいというところが出てきたので (まだ確定ではありません) 、いまのうちにダウンロードしたりあちこちにばらまいたりしておくといいと思うぞ。(11/28)

ビッグ・ブラザーのポスターでもトップにかざろうかと思ったけれど、みんなおどろおどろしいものばかりで、小説の記述に即したニュートラルなものがあまりないので少しびっくり。

訳していて、いろいろ含蓄があっておもしろい。ゴールドスタイン『寡頭制集産主義の理論と実践』や、特にオブライエンの理論は、ほとんどポストモダン理論で、ポモがなぜ弾圧と専制にはしりたがるかがよくわかる。現実は存在しない、過去は人々の意識と記録の中にしかない!

そして、多くの人はウィンストンとジュリアの悲恋に反応するけれど、ぼくはなんだか、お母さんとのかすかな思いでのほうに心が動いた。ウィンストンが最後に思い出すのもそれだし。そこらへんも含め、いろいろ読める。とはいえ、最後にウィンストンが捨て身の反逆を試みるときの核はジュリアへの想いなので、たぶんジュリア中心に見るのは決してまちがいではないのだろうけれど。

ちなみにぼくは、バージェス『1985年』のほうを先に読んだんだけれど、あまりおぼえていないというか、あからさますぎて鼻白んだ記憶がある。ただ彼が、ウィンストンは植物の名前とかをやたらに知っているが、すでに1980年代でも都会人はそんなもの何も知らないので違和感があると言っていて、時代の差やことばの現れ方に関する考察を展開していたのはおもしろかった。

さて年頭の宣言では、オーウェル『1984年』と、あとバロウズの『爆発した切符』もあげると言っていたが、あと一ヶ月で終えるのは……ちょっと無理。

で、ここではこれを貼らざるを得ないよなー。あの映画にはかっこよすぎる曲ではあった。

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