
レム『技術大全』はすでに全訳したし、委員会諸賢のみなさんはもちろんお読みだろうね。そうでない人はよもや読んだりしてはおるまいね。
さて、レムはこれを書いてから30年たって「30年後」というフォローのエッセイを書いた。これは『技術大全』のpdfに入れておいた。が、これはすでに書いたように、「おれ、VRを予見したんだぜどうだ、すげえだろ!」というくだらない自慢で、「だから『技術大全』はすごいんだ」という話。
でも、『技術大全』でVRの話というのは、全然メインの話じゃない。メインの話でできあがった新技術やまったくちがう物理体系の世界をどうやって体験しましょうか、というだけの話であって、それがあたったからってはしゃがれても困りますわねえ。
そしてこの「30年後」以前に「20年後」というエッセイがあるというのは聞いていたけれど、これまでどこでも見つけられなかった。 まあ「30年後」があんな惨状なら、「20年後」も大したことあるまいよ、とは思っていた。
だがふとロシア語訳を見ていると、収録されていた。そして中身を見ると「30年前」よりずっといいじゃないか! 『技術大全』の本論ときちんと関係して、そのうまい更新とまとめになっている。だから、グーグル翻訳とGrokの力を借りて訳してみました。
ロシア語からのAI&機械翻訳なので精度はほどほど。が、中身はきちんとわかるはず。以下はその訳者解説:
レム「20年後」訳者解説
技術大全』が 1964 年に書かれてから約 20 年後の 1982 年にレムが書いた、その後のフォ ロー。ポーランド語のこの頃の版に収録されたはずだが、ここではロシア語版からの重訳。原文 は以下にある archive.org のものを使っている。ザンクトペテルスブルクの AST 出版が 2004 年に出したもので、ロシア語訳は S・ペレスレギン& N. ユタノフによる。1967 年版をもとに していて、元々の露訳もその年らしく、著者のロシア語版序文にはミール出版への謝辞が書かれている。この版はそれにこの「20 年後」をつけている。
https://archive.org/details/summatekhnologii0000stan
ただし山形はロシア語は読めないので (キリル文字もかなり忘れてる)、GrokにやらせたのとGoogle翻訳をつきあわせる形で確認しているが、キリル文字のOCRの信頼性もイマイチだし、いろいろミスはあるはず。が、何が書かれているかわかるだけでもありがたい。
いつもながらレムは例によって、自分はすべて正しかった、先見の明に満ちていたと述べる。ここらへんの妙な自負はいささか辟易させられる面はある。そしてそれを正当化するために、歴史改変まで試みるのはいささか鼻白む。『技術大全』で、異星文明とは当然出会っていいはずだというのが基本だった。そして実際にSETIが成功していないのを受けて、その理由を後付けであれこれ憶測していた。ところがこの文章では、自分はもともと異星文明との出会いに懐疑的だった、自分は正しかった、と言いつのる。
だがこの論の見所は第2節で、ここでは生物進化と技術進化の類似性について改めて論じ、半導体の集積密度などに目配りしつつ、技術進化がいずれDNAなどとは比べものにならない素粒子レベルで起こり『技術大全』のビジョンが実現される可能性を語る。そこでの書きぶりは、本文よりも落ち着いていてわかりやすく、『技術大全』の中身の概略がよくわかる。
このさらに十年後に、レムは『30年後』という文章を書いている。これは山形のやった『技術大全』日本語訳につけた。こちらは、なんかVRが当時盛り上がっていたので、レムもすっかり舞い上がり、どうだおれは正しかった先見の明があったと威張りくさるばかり。『技術大全』って、そんなのはぜんぜんメインじゃなくて、せいぜいがそのメインコースの技術進歩をこの人間たちがどんな形で体験するか、というアイデアにすぎないんだけどなあ。それに比べると、この『20年後』はいいわけがましいところもあるが、特に後半は『技術大全』の本道についてきちんと再整理とフォローを行っていて、ずっと有益な文章になっている。
あともう一つの見所は、随所でロシア語版編集部がつけた注。レムの自信たっぷりな断言に細かくつっこみを入れて、そのまちがいや根拠のなさを容赦なく指摘。これを見る限り、ロシア語訳者/編集部も山形と同じように、レムの妄想をおもしろがりつつもかなり眉につばをつけつつ受け取っていたことがわかる。おそらく『技術大全』本文にも、この手の注がたくさん入れられているのでは、と思うけれど、さすがにそこまではフォローしきれない。
では、お楽しみあれ。