2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

堀江『時計回りの振り子』:こういう余韻のある文はうらやましい。

振り子で言葉を探るように作者:堀江 敏幸毎日新聞社Amazon時計まわりで迂回すること - 回送電車V作者:堀江 敏幸中央公論新社Amazon 書評集とエッセイ集。ぼくも書評をいっぱい書いているし、その分他人の書評は気になるが、目にするものの半分は書評の名に値…

須山『クレバスに心せよ』:レベルの低い翻訳雑記で意味なし。

クレバスに心せよ!―アメリカ文学、翻訳と誤読作者:須山 静夫吉夏社Amazon 英文学の先生だそうだけれど、愚直だけが取り柄……といいたいところだが、それも取り柄となっていない。そういう人が自分のやった翻訳について、あれこれ書いている翻訳雑記みたいな本…

ウォールセン『バイオパンク』:新ジャンルに取り組むアマチュアたちの挑戦とその障害をまとめた、わくわくする本。

バイオパンク DIY科学者たちのDNAハック!作者:マーカス・ウォールセンNHK出版Amazon 遺伝子組み換え、と聞いただけで怖じ気づく人は多いが、その恐ろしい遺伝子組み換えを、いまやそこらのホビイストが平気で始めている。本書はその動きや遺伝子組み換えホビ…

今和次郎『日本の民家』:民家の持つ合理性を見抜いた名著

日本の民家 (1937年)Amazon 久しぶりに読んだ。考現学の今和次郎が、日本の民家をあちこち調べてまわって記録した本。学生の頃に一度読んだ記憶があるが、ほとんど忘れていたけれど、こんど、「今和次郎「日本の民家」再訪」を読んだときに記憶を復活させる…

ポズナー&ロスバート『脳を教育する』:いい本だが専門的。

脳を教育する作者:ポズナー,マイケル・I.,ロスバート,メアリー・K.青灯社Amazon 装幀やタイトル表紙は結構通俗科学書に見せようとしているけれど、かなり専門的。第一章は、ずっと氏か育ちかの議論の紹介に費やされ、第二章は、脳の活性部位を同定する方法の…

見田&大澤『二千年紀のなんとか』:読む気もないが、いまって三千年紀じゃなかったっけ?

二千年紀の社会と思想 (atプラス叢書01)作者:見田宗介,大澤真幸太田出版Amazon 今日、送られてきた。ぼくはどっちの論者もダメダメダメのかんたんふだと思っているので、ページを開く気すらないが、アマゾンによれば 二千年紀の最初の一〇年の経験は、現代の…

ターケル『仕事!』:まだ途中だが涙が出そうなほどいい。

仕事(ワーキング)!作者:スタッズ・ターケル晶文社Amazon 分厚い本だし、場所ふさぎだし、過去20年で何度か資料や邦訳確認で使っただけだし、たぶん質より量って感じだろうからさっさと読んで処分しようと思って読み始めたが、ちょっとすごすぎて処分できそう…

大田俊寛『グノーシス主義の思想』:おもしろいが、どこまでが定説? ポアは? なぜこんな変な発想が要請されたのか?

グノーシス主義の思想―“父”というフィクション作者:大田 俊寛春秋社Amazon とてもよいオウム本を書いた大田の処女作で、グノーシス主義にも(『ヴァリス』とか読んだので)興味あったので読んで見た。 オウム本と同じで、とてもすっきりしていて明快。「父親…

木村『ラテンアメリカ十大小説』:お手軽な紹介としてはいいんじゃないか。記憶のリフレッシュにもなる。特に目新しい視点はなし。

ラテンアメリカ十大小説 (岩波新書)作者:木村 榮一岩波書店Amazon 中南米(ブラジル除く)の主要作家についてのお手軽な解説。採り上げられている本は、テラノストラ以外一通り読んでいるけれど、ずいぶん昔に読んだものも多く、かなり忘れているなあ。「そ…

サトウ『学融とモード論の心理学』:業界内部向けの本らしいが、あちこちで疑問符いっぱい。

学融とモード論の心理学―人文社会科学における学問融合をめざして作者:サトウ タツヤ新曜社Amazon 学問には、学者がお互い同士だけの評価に頼るモード1の学問と、その外に出ていって社会と関わりながらやるモード2とのやつがあって、モード2のほうもがんばら…

斉藤・中川編『人間行動から考える地震リスクのマネジメント』:住宅関連の地震リスク低減施策を行動経済学で実証的に考えたよい本。

人間行動から考える地震リスクのマネジメント: 新しい社会制度を設計する作者:誠, 齊藤,雅之, 中川勁草書房Amazon 題名を見て、例によって経済偏重の社会を見直せとかエコなナントカとか、その手のインチキ本じゃねえだろうなあ、とものすごく警戒していたが…

高橋英利『オウムからの帰還』:オウム内部、サティアンの様子などの記述はおもしろいが、まだ神様依存症らしい。

文庫 オウムからの帰還 (草思社文庫)作者:高橋英利草思社Amazon 「修行」の記録やサティアン内部の様子の記述などは非常におもしろい。ただ、ぼくはオウム事件を直接は知らないし、後から読んだ話もかなり忘れているので、松本サリン事件とか村井刺殺とか、…

ケレーニイ『迷宮と神話』:結論は一行だがたたみかける語り口は楽しい。

迷宮と神話―迷宮の研究--ある神話的観念の線反射としての迷宮作者: カール・ケレーニイ,種村季弘,藤川芳朗出版社/メーカー: 弘文堂発売日: 1986メディア: ? クリック: 35回この商品を含むブログを見る昔から本棚に居座っているので、とりあえず読む。前半は…

シュナペール『市民権とは何か』:アメリカもっと調べたらよいのでは?

市民権とは何か作者: ドミニク・シュナペール,富沢克,長谷川一年出版社/メーカー: 風行社発売日: 2012/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 39回この商品を含むブログ (3件) を見る結論を見よう。冒頭にこうある。 この十年ほどの間に「市民」と「市民権…

西村清和編『日常性の環境美学』:編者の単著よりは読めるが寄せ集め感が強い。

日常性の環境美学作者: 西村清和出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2012/03/14メディア: 単行本 クリック: 129回この商品を含むブログ (3件) を見る上のアマゾン商品紹介を見ると単著に見えるが、いろんな人の論文集。以前、編者のプラスチックの木云々の本…

楊『毛沢東大躍進秘録 』:うー、長い。

毛沢東 大躍進秘録作者:楊 継縄文藝春秋Amazon大躍進の実態について、地方部のいろんな記録を漁って精度を高めたもの。もんのすごく分厚くて細かくて長い。各地の飢餓の実態、人肉食の横行、人々の怒りと悲しみ、幹部たちの保身、記録や報告の改ざん、中央の…

バルガス=リョサ『小犬たち/ボスたち』:あぶなげない中短編集。社会問題に拘泥せず、着想の展開と書くこと自体の喜びで書かれている。

小犬たち・ボスたち (1978年) (ラテンアメリカ文学叢書〈7〉)作者:M.バルガス=リョサAmazon なんだかツイッターを見ていると、今日はバルガスリョサの誕生日なの?(追記:ちがった。先月末じゃん!) 記念でもう一冊。バルガス=ジョサ唯一の短編集(いまで…

カプシチンスキー『皇帝ハイレ・セラシエ』:淡々とした側近の談話で紡がれる皇帝の晩年。おもしろさは太鼓判だが時代背景とその後の歴史は予習必須。

皇帝ハイレ・セラシエ―エチオピア帝国最後の日々作者: リシャルト・カプシチンスキー,山田一廣出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1986/03メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 84回この商品を含むブログを見るうーん。実におもしろいんだが……これは発刊当時…

バルガス=リョサ『継母礼賛』:雰囲気の盛り上げかたは見事。計算高さも鼻につかないし、短かくてホッとする。

継母礼讃 (モダン・ノヴェラ)作者: M.バルガス・リョサ,西村英一郎出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1990/08メディア: 単行本 クリック: 54回この商品を含むブログ (9件) を見るこれをアマゾンで検索すると、関連書のところに継母もののエロ小説やらDVDやら…

バルガス=ジョサ『ラ・カテドラルでの対話』:うー、長くて単調。

世界の文学〈30〉バルガス=ジョサ - ラ・カテドラルでの対話(1979年)作者: バルガス=ジョサ,桑名一博出版社/メーカー: 集英社発売日: 1979/01メディア: ? クリック: 16回この商品を含むブログ (2件) を見るこれもずいぶん長いこと本棚にあった本。話は、ペル…