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ホール『都市と文明』I:文化芸術の創造理論なんだが、出た瞬間に古びたのはかわいそうながら、それ以前に認識があまりに変では?

Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 I』は、都市がイノベーションの場だからえらいのだ、という結論ありきの本。第一巻では、高踏文化に見られる創造性がテーマとなっている。しかし冒頭にある創造性の理論のレビューがあまりにショボく、その後の各種都市の記述に必要な枠組みが提示されない。 そして結論も、文化芸術の発達のためにはある程度の人口集積が必要で、それから社会経済環境が急変していて、異質な人びとがたくさん入ってきたけれど疎外されていて独自文化を発展させ…

格差の拡大は本当だろうか?——経済学者、格差の数字を見直す(The Economist より)

…ン大学のジョエル・スレムロッドが2010年に書いたものだ。これはIRSによる税務査察の結果を使い、所得集団ごとの税金逃れを推計している。当初、ピケティ、サエズ&ズックマン論文はこうした数字が金持ちによる税金逃れを過小評価していると主張していた。金持ちは賢すぎてIRSなんかに尻尾をつかまれないから、という。だがもっと最近になると、彼らも自分たちの手法がジョンズ&スレムロッドの研究と実はほとんど同じだと論文で述べている。他の経済学者たちは、ここに割り込んでどっちが正しいのか判断し…

アマゾン救済: 2008年分 2

…方は、スタニスワフ・レムやルロワ=グーランとも共通するものであり、やはりそうか、という気がするが、各方面での科学技術の発達をきちんと把握した上での議論展開は堅実であり、刺激に富む。 ただし翻訳は、あまりよい評価をあげられない。「ブリトニー・スペアース」「スタンレィ・ルブリックの映画『2001年宇宙の旅』」(ルブリックってだれ?)「Who博士を追うDaleks」「人形劇Thunderbirds」と、ポピュラー文化はほぼ全滅。J.B.S.Haldaneは、ふつうはホールデンと表記…

Amazon救済 2004年分 2

…2004/11/3 レム『ソラリス』: 新訳する意味があったのかな? 改善はされているけど。, 2004/10/27 梅棹『ITと文明』: ゆるい本に梅棹忠夫の自慢話風味そえ。, 2004/10/26 ほとんど文句なし。文筆業にはこれだけで十分!, 2004/10/20 ゴンブロヴィッチ『トランスアトランティック』: 中原昌也meets太宰治という感じだが、つまらない。, 2004/10/19 朽木『貧困削減と世界銀行』: 偏った概説に思いつきのちりばめ。不安な本です。, 2…

え? じゃあエンブレムの「コンセプト」は原案にはなかったってこと?

…オリンピックのエンブレムの問題はもう、実におもしろくてもともとオリンピックなんかやるなと思っていた身からすれば、これだけ楽しませてくれるんなら少しは大目にみようかと思ってしまうほど。 で、ぼくはどうでもいいオリンピックのエンブレムなんかどうでもいいんだけれど、そのぐだぐだぶりは大変おもしろく見ている。で、今日になってエンブレムの「原案」と称するものが出てきた。この左端。 ????? なにこれ?? というのも、最初にあのベルギーの劇場ロゴとそっくりだという指摘があったときに「い…

水野『イメージの地層』:美術史と信仰形態の関係を見た本なんだが……

…描かれている。エルサレムへの巡礼を、実際に行けない人が追体験できるように作った巡礼テーマパークとも言うべきサクロモンテの話とか、うわーという感じ。ここらへんの話は、本当に抜群におもしろい。そして、それがイエス像やマリア像にどう影響しているか、という分析もおもしろい。図像は、ヘタをすると偶像崇拝になってしまう。それを避けるために、それは偶像じゃなくて本物なんだ、本物の痕跡があるから偶像じゃないんだ、みたいな理屈が展開される。あるいは、「新しい敬虔」が台頭すると、イエス像そのもの…

桑木野『叡智の建築家』:記憶術が生み出した建築による世界記述と創造

…。そこについたエンブレムその他は、各種の物語や道徳(昔は、あらゆるモノは宇宙の中で神様を頂点とするヒエラルキーの中の一定の役割や意味を持たされていて、モノを知るというのはその役割や意味とそこから出て来る宇宙秩序の教えを理解するということでもあった)を教えてくれるものだった。また円形ミュージアム/記憶の劇場も、そういうもの。いろんなものを収集して展示する際の配置や整理が書物的な分類の理念を反映し、各種のモノの相互関係をあらわすことから、新しい知識が生み出され、そして修辞も同じよ…

牧真司他編著『サンリオSF文庫総解説』:落ち穂拾いなど

…リオの予告に出ていたレム『SFと未来学』、実はドイツ語版から最初の一章を訳したんだけれど(これは別にぼくがサンリオに依頼されたわけではなく、個人的興味でやっていた)、あのノートはどこに行ったんだろう……沼野充義の研究室に話をききにいったとき、その話をしたら「あれはドイツ語からの重訳でも自分がざっと見て出せたらいいな」というようなことを言っていて、少し先に進めようかなと思って結局それ以上手をつけなかったんだよなー。あれやこれやいろいろです。 付記 (2025/09/18) ………

グリック『インフォメーション』:意味を求める人間と、自走する情報のちょっと悲しい別れ

…悲しくて好き。それはレムが「ゴーレム」で描いた、人間を離れた知性と情報の世界でもある。最後なので、他の本にもっといろいろつなげたかったところ。「チューリングの大聖堂」もつなげられると思うし、原さんがつまらない書評を書いた「機械との競争」についても少し――とかいろいろ思ったが800字(実際は760字なのよ)では限界。まあこれについてはCakes連載でも書いたし、またここでも独立に書くこともあるでしょう。 山形浩生の「経済のトリセツ」 by 山形浩生 Hiroo Yamagata…

Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 17

…こへかつて自分をハーレムに売り飛ばしたクライブ・クラウチマスが登場し、少し火遊びをしたのがキットにばれてちょっと気まずくなったり。二人でトリノに行っても口論ばかりで、キットはイタリア人の友人とものすごい勢いでおしゃべりするうちに、未来へ入り込む、というか未来派になってしまうような。オーストリアのイタリア侵攻に対する抵抗運動にキットが参加したのも、それに拍車をかける。ある日、二人のところへ、リーフとヤシュミンが戦争難民として訪ねてくる。が、キットとダリアはクラウチマンとの一件を…

Thomas Pynchon Against the Day あらすじ 15

…タンチノープルのハーレムに売り飛ばすことにする。さてそのオリエント急行の道中、スゼゲッドの駅で彼女を誘拐して身代金を取ろうという試みがあるんだが、ちょうどそのとき反対方向の列車に、キット・トラヴァースが乗っていた。そして誘拐騒動の中、二人は出会い、いっしょに逃げ出して、誘拐犯を列車の中に置き去りにし、パプリカ畑の中を走り、セックスしまくり。さてフランクは(といっても覚えてないだろうから最初のほうを読んでおくれ)まだメキシコにいて、まああれこれいろいろやってます。一方、リーフ、…

生産性の話の基礎

…金――は絶対上がる。レムによれば、かつてポーランドでは家政婦がすごい力を持ってたんだってさ。だからふと気がつくと、あなたの給料よりもメイド喫茶女中や駅の掃除員のほうが給料が高い事態だって十分に考えられる。明日はあなたも、院卒の経歴を隠して高卒資格で採用面接に臨んでいるかも知れないよ。そして……やっとのことで、同じ職種、同じ仕事の中で見たら、生産性の高いほう――単位時間でこなせる量の多いほう――が高い賃金を得るわけだ。ふう。やっと最後の最後で、ふつうの人が考えている生産性と稼ぎ…