2015-01-01から1年間の記事一覧

エゴサーチ: 富岡日記とSF業界の後編 redux

二年ほど前に、「エゴサーチ: 富岡日記とSF業界の後編」というエントリーを書いた。 cruel.hatenablog.com さて、これは実は、もっと長いモノを書いていたんだけれど、それを査読してもらった人に、こんなものを公開してもだれも喜ばないと言われて、ひっこ…

反知性主義3 Part 2: 内田編『日本の反知性主義』:白井聡の文は、無内容な同義反復。他の文は主に形ばかりのおつきあい。

はい、まだ反知性主義の話は続きます。第3部を前編と後編にわけるなんて、最近の無内容を引きのばそうとする『トワイライト』とか『ホビット』『ハリポタ』『ハンガーゲーム』みたいでいやなんだけどさ、お金とるわけじゃないし、どうせ読む側もあんまり長い…

反知性主義3 Part 1: 内田編『日本の反知性主義』は編者のオレ様節が痛々しく浮いた、よじれた本。

しばらく間が空いた。で、反知性主義についての簡単なお勉強を経て、ぼくが手に取ったのは『日本の反知性主義』だった。 この本の題名は、明らかに『アメリカの反知性主義』を意識しているようだ。その一方で、この面子を見ると、ぼくが冒頭に挙げた『現代思…

え? じゃあエンブレムの「コンセプト」は原案にはなかったってこと?

東京オリンピックのエンブレムの問題はもう、実におもしろくてもともとオリンピックなんかやるなと思っていた身からすれば、これだけ楽しませてくれるんなら少しは大目にみようかと思ってしまうほど。 で、ぼくはどうでもいいオリンピックのエンブレムなんか…

We'll Make Great Pets: 機械支配待望論

反知性主義はちょっと疲れたのでお休みして、思いつきの書き殴り。 ザ・セカンド・マシン・エイジ作者: エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson),アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee),村井章子出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2015/07/29…

反知性主義2:森本『反知性主義』:ホフスタッターの当事者意識や切実さはないが概説書としてはOK

おちゃらけ (承前) まずは少しおちゃらけから。 前回の反知性主義話を書いた直後に、斉藤環が次のようなツイートをした。 あ〜また誤解する人が出てきたので注釈しときますとですね、僕が「反知性主義」と呼んでいるのは「バカ」の上品な言い換えとかじゃ…

反知性主義1: ホフスタッター『アメリカの反知性主義』 知識人とは何かを切実に考えた名著

はじめに 反知性主義をめぐる本を3冊読んだので、その話をちょっと書こう。なぜそんなものを読もうと思ったかというと、『現代思想』の「反知性主義特集」に対するアマゾンのレビューがぼくのツイッターでちょっと話題になっていたからだ。 「彼らは反知性主…

中国メディアの歪曲

昼休みに2ちゃんまとめサイト見てたら、こんな記事を見かけた。 web.archive.org なんかBBCってえらくきついこと言うんだねー、と思って、実際なんと言っているのか見てみようと思って、検索かけました。ここで言及されているのは、明らかに次の記事。 www.…

ファシズム学ぼう! ムッソリーニ『ファシズム:ドクトリンと制度』

The Doctrine of Fascism作者: Benito Mussolini出版社/メーカー: Howard Fertig発売日: 2006/09/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログを見る 前にムッソリーニの伝記を書評したとき、いくつかムッソリーニ関係の本を読んだんだけど、見てみると…

ケインズ「孫たちの経済的可能性」

ついでにちょっとやった「孫たちの経済的可能性」。あちこちに納められているけどネット上であってもいいと思ったので。 ケインズ「孫たちの経済的可能性」(pdf 75kb) https://genpaku.org/keynes/misc/keynesfuture.pdf 内容は有名といえば有名だが「ケイン…

マンデヴィル『蜂の寓話』:ケインズがいかにイヤミなやつかよくわかる。

蜂の寓話―私悪すなわち公益 (叢書・ウニベルシタス)作者: バーナード・マンデヴィル,泉谷治出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 1985/06メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (2件) を見る マンデヴィル『蜂の寓話』というのは、知ってい…

ケインズ『平和の経済的帰結』翻訳終わったぜ。

はい、先月末にはじめたケインズ「平和の経済的帰結」、終わったぜ。乞食ども、持ってきやがれ。 ケインズ「平和の経済的帰結」(pdf 1.2 Mb, 商業的に出そうなので公開停止) そのときに述べた通り、題名のPeaceは、講和条約のことではあるんだけれど、文中で…

ナイム『権力の終焉』:あら翻訳出てたの。

権力の終焉作者: モイセスナイム出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2015/07/22メディア: Kindle版この商品を含むブログを見る あら、この本、邦訳出てたんだ。個人的にはあまり感心しなかった本で、昔、頼まれて査読をしたんだけれど、お奨めしなかった。そ…

はてなブログに引っ越してよかったこと

何のメリットがあるかわからず、はてなダイアリーでずっとほっぽっといていたが、多少はいいことあると聞いたのではてなブログに移行してみました。 いまのところのメリット 鄧小平とか深圳とか書ける。 英語の表示はずっときれい。 デメリット まだ書き方な…

人情山吹黄金地獄 そば屋の段

しばらく前に、近所のそば屋が開いてたので入ってそば。注文を待っている間、何の気なしに聞こえてきた臨席の会話。同棲して一週間なの~、とかギャル風女子が友だちの女の子と恋バナしてるなー、と思って、艶っぽい話でもこないかと漠然と聞いていたら突然…

トロツキー『ロシア革命史』:同時代の人にだけ向けて書かれたアジ

ロシア革命史 全5冊セット (岩波文庫)作者: トロツキー,藤井一行出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/07メディア: 文庫この商品を含むブログを見る 『トロツキー』訳すときに参考書として引用チェックなどに使うので買ったけれど、通読したことはなかった…

ケインズ「講和条約の経済的帰結」:ドイツよ、これを読み直そうぜ。

もはや泥沼というしかないユーロ情勢。えらそうなこと言ってるドイツだって、借金まともに返してないじゃないか、というピケティの突っ込みがあったけれど、それはまともな歴史感覚と、適切な金貸しとしてのバランス感覚がある人ならみんな思ったこと。が、…

EC『ユーロ/EMUの完成に向けて』:EU 上層部ってなんかクスリでもやってるのか?

2015年6月22日。ギリシャはデフォルト寸前。2010年、2012年に続いてまたもや(いやこれまで以上の)大規模な救済は何らかの形で不可欠で、あとはそれがどういう形で起こるかというだけの話(ドイツ政府はそれすら理解していない様子だが)。これまでトロイカ…

Boole et al. Leaving the euro: A practical guide: 何とユーロ離脱マニュアル!

はじめに ギリシャを見ているうちに、中国の株式市場暴落があれよあれよという間にでかい話になってしまったけれど、でもギリシャも相変わらず負けてはいない。IMFに対して堂々のデフォルト、国民投票で正面切っての反抗、窮鼠猫を噛むじゃないけど、もうや…

エンゲルス「イギリスの労働階級」終わった!

ちょっと気が向いて、若き日のエンゲルスのルポを訳しはじめたのが1年ほど前だったけど、ぼちぼちやってるうちに終わりました。エンゲルス自身が若書きだと言っているので、若々しくしてみた。産業革命の成果にものすごく興奮しつつ、一方で労働者のひどい状…

水野『イメージの地層』:美術史と信仰形態の関係を見た本なんだが……

イメージの地層 -ルネサンスの図像文化における奇跡・分身・予言-作者: 水野千依出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2011/09/23メディア: 単行本 クリック: 26回この商品を含むブログ (10件) を見るうっひー、先日採りあげた『叡智の建築家』と同じく…

宗教経済学の可能性など。

テロの経済学作者: アラン・B・クルーガー,藪下史郎出版社/メーカー: 東洋経済新報社発売日: 2008/08/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 68回この商品を含むブログ (18件) を見るえらい経済学者に質問。信仰に篤い人の経済モデルってだれかやってないん…

シェンチンガー『アニリン』:有機化学がイノベーションとハイテクの最前線だった時代

アニリン―科学小説 (1971年) (コスモス・ブックス)作者: K.シェンチンガー,藤田五郎出版社/メーカー: 法政大学出版局発売日: 1971メディア: ?この商品を含むブログ (1件) を見るアニリンと言ってなんだかすぐにわかる人は、有機化学関係者以外あんまりいない…

桑木野『叡智の建築家』:記憶術が生み出した建築による世界記述と創造

叡智の建築家―記憶のロクスとしての16‐17世紀の庭園、劇場、都市作者: 桑木野幸司出版社/メーカー: 中央公論美術出版発売日: 2014/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見るおもしろかった。いやあ、分厚い本を見ると「きみ、それはワタクシへの…

ケベック州のメープルシロップカルテル強盗事件

Photo by Liz Castro, CC license 同じ人によるメープルシロップ製造全工程の写真。Mental Floss で拾ってきたネタ。カナダのケベック州は、世界のメープルシロップ生産の 70-75%を担っているそうなんだが、そこには「グローバル戦略メープルシロップ・リザ…

小田嶋『友だちリクエストのなんとか』:恥ずかしいだけの本

友だちリクエストの返事が来ない午後作者: 小田嶋隆出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2015/04/28メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (6件) を見る小田嶋隆は、かつて別冊宝島なんかでもよく書いてたことからもわかる通り、ちょっとひね…

田嶋『高学歴貧困女子が読み解くピケティ』:意外や意外、ベスト級の解説書。色物に非ず!

高学歴貧困女子が読み解くピケティ (SAKURA・MOOK 2)出版社/メーカー: 笠倉出版社発売日: 2015/05/08メディア: ムックこの商品を含むブログ (2件) を見る見た瞬間、まあろくでもない色物だと思うのは人情でしょう。高学歴貧困女子がこんな問題抱えているとい…

『コミックでわかるピケティ入門』:入門書の中で一、二を争う要領を得ない本。監修の藤田康範はまともに目を通したのか?

コミックでわかるピケティ入門作者: 藤田康範,梅屋敷ミタ,村上裕一出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版発売日: 2015/05/17メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る前にも述べた通り、ぼくはいま、マンガによるピケティ入門書の監修をしているので…

永浜『図解ピケティの「21世紀の資本」』:変なところもあるが内容がきちんと咀嚼されており悪い本ではない。

図解 ピケティの「21世紀の資本」 (イースト新書Q)作者: 永濱利廣出版社/メーカー: イースト・プレス発売日: 2015/05/10メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る決して悪い本ではない。ただ、ピケティの解説書からは結構はずれる部分もある。一応、…

安田監修『図解ピケティ入門』:日本の格差についての詳しい記述は、各種解説書の中ではダントツ。グラフの解説も親切。

図解 ピケティ入門 いちばんやさしい『21世紀の資本』の読み方作者: 安田洋?出版社/メーカー: 彩図社発売日: 2015/04/24メディア: 大型本この商品を含むブログ (3件) を見る各種の解説本の中で、まず他よりも大きな判型なのが特長。これで何がよいかというと…