1984 の検索結果:

R.A.ラファティ『エニスコーシー・スウィーニーの三つのハルマゲドン』

…悪魔らしい。 そして1984年に、エニスコーシー・スウィーニーは「ハルマゲドン III」を発表し……。 ラファティが、こうした現実の世界について直接的なコメントを含んだ作品を書くのはきわめてめずらしい。ここから見えてくるのは、ラファティにとって、このいまの現実の世界線は、実際には起きないはずのものだったということだ。二〇世紀に起きた様々な愚行、特に二度の世界大戦は、彼にとってはあってはならないものだった。悪魔がそれを実現させようとする。ラファティ的には、自分が住んでいた (そ…

W・S・バロウズインタビュー (SF Horizons #2, 1965)

…んです。実のところ『1984』は現在から見るとちょっと甘いと思う。いささか古びています。 SFH:それでまたおもしろい質問が出てきます。私はルイスのペレランドラ三部作はかなり荒唐無稽だと思いますが、かれ自身は個人的に何かそれにかなり近いものを信じていたという印象を持っています。つまり材料のいささかバビロン的なまとめ方は荒唐無稽でしたが、かれはまちがいなく神と悪魔を信じていて、それはかれにとっては本物の人間であり、本当に世界に作用していて、かれはフィクションにおいてそれを最も芸…

ジョイス『ユリシーズ』校訂をめぐるゴシップなど

…版テキストというのを1984年に作って、いまやそれがスタンダードになっているということらしい。バージェスは、それ以前のバージョンを元にしているので、少しちがってくる。 もちろん『ユリシーズ』なんてあんな本なので「これで完全不動の完成版!」なんてのがあるわけではなく、ジョイスも生きていたら、あとから思いつきで「あ、これも入れよう」「こんなやり方もあるかな」でいくらでもいじり続けられたはず。またゲラの書き込みも、ジョイスがやったのか校正者がやったのかよくわからんのもあるらしく、ど…

オーウェル「バーナム再考:現状追認知識人の権力崇拝とその弊害」(1946)

…らすじがオーウェル『1984年』に登場するゴールドスタイン『寡頭制集産主義の理論と実践』およびそれを解説するオブライエンとまったく同じであることに注目。本稿ではそれが徹底的に批判されている。これを見るとオーウェルの『1984年』は、「こうなる」という予言や警告ではなく、むしろそうした見方に反発した戯画なのだと考えたほうが妥当かもしれない。 またときどき引用される「戦争を終える最もすばやい方法は敗北すること」というのは、さっさと負けて戦争やめろという意味ではないことにも注意。こ…

1984年縦書きepub版の暫定版

…の人の要望に応えて、1984年の縦書きepub版を作って見たが、ルビがうまくいかない。ルビだけ表示されて、地の文字が出てこないというのは何なんだ。 まあないよりましでしょう。以下の目次の下にリンクしてあるので、見てみてください。 genpaku.org MS-Wordの縦書き作ってepubに出力したら、縦にはなったけれどページが相変わらず左から右へ流れて不自然きわまりない。epubのスタイルシートいじって、epub-writing-modeを変えてそこは突破したが、ルビはどう…

オーウェル『1984年』全訳完成

…た通り、オーウェル『1984年』の全訳をあげました。 genpaku.org html版と、pdf版があるので、まあお好きに。当然、クリエイティブコモンズなので、自由にお使いください。個人的にはいま出版されているどの翻訳よりもいいとは思うが、それは趣味もあるでしょう。商業出版したいとかいうところはあるかなー。なければ自分で電子ブックでも作って売ろう。 追記:商業出版したいというところが出てきたので (まだ確定ではありません) 、いまのうちにダウンロードしたりあちこちにばらまい…

トマス・ピンチョン「『1984年』への道:オーウェル『1984年』序文」

…ンによるオーウェル『1984年』への2003序文。本書が単なる反ソ反共小説ではない。オーウェル自身、立派な左派社会主義者ではあった。だが彼は、制度化された社会主義が己の権力にばかりこだわり、スターリニズムに目を閉ざし、むしろ肯定するのに絶望していた。本書の批判は、そうした社会主義が己の権力温存のために使う手段の戯画化である。世界分割はヴェルサイユ講和会議や第二次大戦後の戦後体制の戯画化でもある。本書の批判はもちろん、現在のネット監視社会の予兆めいた部分もある。その一方で、宗教…

オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性

…チョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書かれていることにこめられた希望だけ。だが、考えて見れば、ピンチョンはすべて雑然とした羅列しかできない人ではある。それを複雑な世界の反映となる豊穣な猥雑さだと思ってみんなもてはやしてきた。だが実はそれは、読者側の深読みにすぎないのかもしれない。そしてその深読みが匂わせる…

サイード『オリエンタリズム』1995年あとがき

…ty Press, 1984 ) 邦訳ホブスボウム&レンジャー編『創られた伝統 (文化人類学叢書)』(紀伊國屋書店, 1992). *2:O'Hanlon and Washbrook, "After Orientalism: Culture, Criticism, and Politics in the Third World;" Prakash, "Can the Subaltern Ride? A Reply to O'Hanlon and Washbrook," いずれ…

ポランニー/イモータン・ジョー/コルナイ:不足の経済と社会権力

…足」の政治経済学 (1984年) (岩波現代選書〈90〉)作者:コルナイ・ヤーノシュAmazon この人の理論もいろいろ含蓄があってすばらしいんだけれど、その大きなポイントの一つは、ものが不足している状態だと、単純な需給と価格調整による市場とはちがうものが作用しはじめる、ということだ。 不足状態では、持っている人は、持たない人に対して権力行使できるようになる。足りないものを誰が得るのか? いちばん高いお金を払った人、という仕組みもあり得る。でももう一つ、持っている人が、だれが…

ブローデル『都市ヴェネツィア』:お気軽なフォトエッセイ

…示唆しておしまい。 1984年に書かれた本で、半分は懐古趣味だけれど、もちろんそこいらのタレントやライターどものフォトエッセイなんかとは格がちがう代物。あちこちにある井戸、ちょっとした建築の特徴、縦横に駆使される文芸的な引用など、お見事。また行きたくなるねー。 写真はプロのカメラマンによるものだけれど (がんばってエッセイ書いてる)、そんなすごい感じはしない。ヴェネチアそのものだけでなく、かつてその繁栄を支え、いまは廃墟になった周辺地区まで映しているのは、ちょっと楽しいかな。…

キューバの経済 番外編: ノマドの夢と現実

…足」の政治経済学 (1984年) (岩波現代選書〈90〉)作者:コルナイ・ヤーノシュメディア: 単行本 が、コルナイ・ヤーノシュとこの山形ごときを比べること自体不敬であるし、下々の俗人の考えとして今後少しずつまとめていこうとは思う。が、そういう気が向く前に、また余談となる。 モンゴルで、いろいろ常識が覆された話はすでにやったけれど、もう一つ大きかったのは、ノマド/遊牧民というものに対する理解が完全に変わったことだった。 ノマドとは何か? ノマド=遊牧民。ぼくはそれまで、遊牧民…

アマゾン救済: 2008年分 2

…でしょ。オーウェル『1984年』の「偉大なる兄弟」って、編集者がせめてつっこんであげてはどうでしょうか? (注:既存の新庄訳で偉大なる兄弟になっているので、ここは仕方ないかも) またそれ以外にも各種表記や表現の異様な古くささや、直訳丸出しの翻訳は読みにくいことおびただしい。もう少し気軽な読みやすい啓蒙書のはずが台無し。もったいない。意味をとりちがえているところがあまり見られないのはせめてもの救い。 支離滅裂。, 2008/9/10 貨幣の経済学 インフレ、デフレ、そして貨幣の…

落ち穂拾いの感想文

…: 白水社発売日: 1984/01メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 上の『情報戦のロシア革命』に頻出し、最もお調子者のバカなロシアの提灯担ぎとして描かれているのが、かのアーサー・ランサム。アーサー・ランサムといえば、名作『つばめ号とアマゾン号』シリーズで有名な、のほほーんとしたブルジョワだと思っていたので、それが社会主義なんかに入れあげていたというのは本当に意外だったので、そこらへんの事情がわかるかと思って読んで見た。が…… これさあ、ランサムは本当に断片的にしか…

増田のジェイコブズ翻訳に関する記述が修正された件

…鹿島出版会発売日: 1984/01/25メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 15回この商品を含むブログ (29件) を見る 「だれも他人の行動を操作しようとせず」と増田は書く。でも都市計画は、そして建築そのものは、すべて他人の行動を何らかの形で操作する行動だ。壁を作れば、それは人の動きを制限する。ドアを作れば、それは人の動きをそこに集約させる。そしてレッシグが指摘するように、それ(アーキテクチャ)はあらゆる規制制御の力中でもっとも強く、最も強引で、最も有無をいわさない…

ホバーン『ボアズ=ヤキンのライオン』:すばらしい。

… 早川書房発売日: 1984/11/30メディア: 文庫購入: 12人 クリック: 3,037回この商品を含むブログ (10件) を見る読もうと思ってずっと本棚の隅にいたこの本、南アフリカに持ってきて読んだけれど、すばらしい。ヨハネスブルグの町をこの高層ビルから見渡すと、ライオンは確かにいる。いるのだけれど、どこへ行ったのだろう。地図を見れば居場所がわかるだろうか。でもその地図はだれが。ぼくの作る地図には、ライオンがいないのだ。車輪にかじりつくライオン。王さまに殺されるライオ…

ジョン・キール『モスマンの黙示』:なんだよ、モスマンが出てきて予言するんじゃねーのかよ。

モスマンの黙示 (1984年) (超科学シリーズ〈2〉)作者: ジョン・A.キール,植松靖夫出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1984/03メディア: ? クリック: 38回この商品を含むブログを見るむかーしから本棚にあって、オレはいつかこれを読むのかねえ、と自分でも半信半疑だったが、ふとこんなもんに不動産を占拠させておいてはいけないなと思って読んで見ましたー! ……倒れそうになりましたよ。モスマンプロフェシーだから、モスマン (蛾人間)が出てきていろいろ予言するんだと…

日本の左翼知識人のうろたえぶりだけが伝わってくる一冊。

… 岩波書店発売日: 1984/10メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (2件) を見る たいへんに不思議な一冊。小田実は、ベ平連(ベトナム戦争への反戦団体、ひいては反米サヨク市民団体)で有名な人だが、別に中国に詳しいわけでもないし、中国語が読めるわけでもない。毛沢東の伝記的、思想的な記述は本当に通り一遍で、受け売りレベルにとどまるし、それすらあまり勉強していないのは明らか。 そんな人が中国にちょろっとでかけてあれこれ見聞きするのだが、それによ…