経済

お年玉にしてはショボいが:アダム・スミス『国富論』8章まで (その後9章まで)

その昔、1999年にプロジェクト杉田玄白をたちあげたときに手をつけたはじめた、アダム・スミス『国富論』、4章くらいまでやってその後ほとんど進んでいなかったが、この4日ほど気晴らしでがーっとやって、8章まで終わった。これで第一巻の半分くらいになる。…

まあXmasプレゼントみたいなもので、ケインズ「芸術と国家」(1938) 翻訳。

今年はろくな年ではなかったし、来年もどうなるやらという感じだが、まあそれでも欲しいやつにはクリスマスプレゼントみたいなものでもあげようか。耶蘇じゃないけど。都市景観保全系の論集にケインズが寄稿していたのを見つけたもので。 全集のどれかの巻に…

ケインズ『平和条約改訂案』、結局全訳しちゃった。

しばらく前に、ケインズ『条約の改訂』が仕掛かりだけど放り出す、という話を書いた。 cruel.hatenablog.com でもなんか、気の迷いで結局全部訳しちまったよ、あっはっは。暇だなあ、オレって。まあ、ご笑納くださいませ。 ケインズ『平和条約改定案: 続「平…

ケインズ「H.G・ウェルズ『クリソルド』書評」

最近、初版諸般の事情でケインズの伝記をいっぱい読んでいるんだが、うーん、スキデルスキーのものすごい分厚い三巻本とかがんばって見ているんだけど、平板だなあ、という感じ。分厚いのだと、その物量にうんざりしてそういう印象になりがちだというのもあ…

ブローデル『地中海』その他:前半は地中海世界の広がりを美しく描き出す名著だが、結論不満、また現代的妥当性は?

Executive Summary ブローデル『地中海』は、特に前半は地中海を取り巻く環境、物質世界とそれをベースにした人間たちの活動を壮大かつ優美に描き出し、とても美しく豊か。でもそれがこれまでの歴史的な見方にどう影響するのか、後半で採りあげる事件や人物…

キューバの経済 番外編: ノマドの夢と現実

キューバの話は書きかけがいくつかあるんだけれど、なんとなくまとめるところでモチベーションが落ちて放置してある。一つの理由は、コルナイ・ヤーノシュ『不足の政治経済学』を読んだら、ぼくが考えていたような話がすでにかなりきちんと考察されていて、…

キューバの経済 番外編: モンゴル唯一の自販機

うーん、前回かなり気合いを入れたつもりなのに、反応が薄くてがっかりですよ。減価償却ガー、といったあたりですでにかなりみんなの理解力を超えたということなのかしら。 まあ仕方ない。今回は息抜きで、番外編としてコメントできた、モンゴルの自販機の話…

キューバの経済 Part3: 利益は「計画からのずれ」!社会主義会計と投資

前回、キューバ経済に見る「効率性」の考え方のちがいについて述べて、それをもたらす資本や投資の不足を指摘した。今回はその資本や投資の話を…… はじめに: モンゴルの財務諸表 開発援助がらみの仕事で、いろんなところでいろんな変なものを見てきたけど、…

キューバの経済 Part2: 経済の「効率性」とは?――物流と『ザ・ゴール』

はじめに:社会主義の「いいところ?」 前回の、憲法改正の話を書いたら、はてなブックマークに「社会主義のよいところも書くべき」というコメントがついて、ぼくは少し驚いた。えーと、どんなところが「いい」と思ってるんだろうか? 強いて言うなら、格差…

キューバ番外編:Cubacell 携帯での3Gインターネット接続マニュアル

Executive Summary; キューバのインターネット事情はかなり劣悪であり、公園や公共施設付近にある官製 wifi アクセスポイントに、アクセスカードを使って一時間1ドルで接続するしかなかった。が、2018年12月から、待望の3Gモバイルインターネットが開始され…

キューバの経済 Part1: 憲法改正と市場経済

1. はじめに 最近、キューバでのプロジェクトが始まって、いま二回目の現地調査。キューバというと、みんなゲバラにカストロ、葉巻で、ついでにブエナビスタ・ソシアルクラブで町中が音楽に満ち……というような漠然としたイメージしか持っていない。このぼく…

内蒙経営策:満州帝国の二番煎じプロジェクト(実はちがう)の全貌

その昔、CUTにこんな文章を書いたことがある。 アゾット/亜素州をめぐる幻想と現実。 かのクラフト・エヴィング商会『クラウド・コレクター』の書評なんだけど、その枕に使ったのが、ぼくの曾爺さんかなんかのインチキプロジェクトの話しだった。 その曾爺…

岩田規久男副総裁は黒田の尻を蹴飛ばしてリフレを十倍増させるべきだったと思う。

本稿の主張は、表題通り。岩田規久男は副総裁として、リフレの理論にもっともっと忠実に動き、黒田総裁を蹴飛ばしても締め上げても何をしてもいいので金融緩和をますます激化させてほしかったし、それができなかったのは不甲斐ないということだ。リフレ派の…

新年プロジェクト2018: The Economy

あけおめ(死語)。昨年は本当にろくでもない仕事が振ってきて、あまりのストレスで体重は一時5キロも減り (残念ながらその後リバウンド)、しかもそれが期間延長というトホホなことになって、秋に終わるはずが年内いっぱいかかり、ギリギリのところで何とか…

『人民元の興亡』:人民元をネタにした単なるゴシップ本。

人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢作者:桂子, 吉岡発売日: 2017/05/24メディア: 単行本 うーん、せっかくもらった本なのであまり悪く言いたくはないんだが、もう少し何とかならなかったんだろうか。いや、おもしろいところはあるんだが、それがゴ…

こんなろくでもない守護霊に憑依されても、あんな立派な学者になれるんですね!

一応さあ、ピケティの関連本は一通りレビューしたいなとは思っててさあ、まあこの本もあることは知っていたんだけど、わざわざ定価で買って印税を一銭でも上納するなんて、霊的風紀維持法に違反するような気がするじゃない? だから古本で安く出回るまで我慢…

サンフランシスコの住宅市場

サンフランシスコの住宅市場に関して、こんな記事を見かけた。 www.vox.com どうせ君たち読まないだろうから、何が書いてあるのか教えてあげると、サンフランシスコはいま、Uberが立地したりアレとかこれとかがきたり、ブルーボトルコーヒーが出てきたりで、…

増田のジェイコブズ翻訳に関する記述が修正された件

2月20日に上げたエントリーで指摘した、増田悦差によるぼくのジェイコブズ翻訳に対するまちがった因縁記事が、修正された。該当する部分は削除され、その旨のコメントも最後についている。 素早い対応、感謝します。 一応、放置しようと思いつつも、このまま…

学校行ってもちゃんと勉強しないとダメよねー、というお話&日本の教育はゴミクズらしいぞ。

Science 読んでたら、経済成長と教育の関係についての論文が出てたのでちょっと紹介。 Knowledge capital, growth, and the East Asian miracle Eric A. Hanushek, Ludger Woessmann, Science 22 Jan 2016: Vol. 351, Issue 6271, pp. 344-345 DOI: 10.1126/…

マクファーレン『イギリスと日本』:これまた産業革命の説明で、人口と疫病撃退のせいだというんだが……

イギリスと日本―マルサスの罠から近代への跳躍作者: アランマクファーレン,船曳建夫,工藤正子,北川文美,山下淑美出版社/メーカー: 新曜社発売日: 2001/06/25メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (5件) を見る 産業革命はなぜ起きたか――ひい…

ケインズ「講和条約の経済的帰結」:ドイツよ、これを読み直そうぜ。

もはや泥沼というしかないユーロ情勢。えらそうなこと言ってるドイツだって、借金まともに返してないじゃないか、というピケティの突っ込みがあったけれど、それはまともな歴史感覚と、適切な金貸しとしてのバランス感覚がある人ならみんな思ったこと。が、…

EC『ユーロ/EMUの完成に向けて』:EU 上層部ってなんかクスリでもやってるのか?

2015年6月22日。ギリシャはデフォルト寸前。2010年、2012年に続いてまたもや(いやこれまで以上の)大規模な救済は何らかの形で不可欠で、あとはそれがどういう形で起こるかというだけの話(ドイツ政府はそれすら理解していない様子だが)。これまでトロイカ…

Boole et al. Leaving the euro: A practical guide: 何とユーロ離脱マニュアル!

はじめに ギリシャを見ているうちに、中国の株式市場暴落があれよあれよという間にでかい話になってしまったけれど、でもギリシャも相変わらず負けてはいない。IMFに対して堂々のデフォルト、国民投票で正面切っての反抗、窮鼠猫を噛むじゃないけど、もうや…

エンゲルス「イギリスの労働階級」終わった!

ちょっと気が向いて、若き日のエンゲルスのルポを訳しはじめたのが1年ほど前だったけど、ぼちぼちやってるうちに終わりました。エンゲルス自身が若書きだと言っているので、若々しくしてみた。産業革命の成果にものすごく興奮しつつ、一方で労働者のひどい状…

アメリカ経済学会大会のピケティセッション:すばらしい。

21世紀の資本作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/12/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (107件) を見るピケティ『21世紀の資本』は分厚いし、データも重いし、印象批評以上の批判がなかなか出てこ…

お金がすべてではないけれど、お金もある程度は効く。

ビヨルン・ロンボルグが言及していたので知った報告書。 Legatum Institute, Commission on Wellbeing and Policy Wellbeing and Economy (pdf) まだ読みかけだけれど、なかなかおもしろいわー。作った委員はアンガス・ディートンからレイヤードなど、えらい…

日銀黒田セミナー@『公研』:すばらしいが、うーん、楽観的だなあ。でも産業界だけにレクチャーとはずるい。

先日、池内恵と対談(というかインタビュー)をしたので、この『公研』という雑誌が毎号送られてくるようになって、面白い記事とか結構ある。電力会社中心の、産業界だけが見る雑誌のようなんだけれど、もっと広く読まれていいんじゃないかと思うんだけど。 …

お金についての浅はかな話

要約 ケインズ 雇用と利子とお金の一般理論作者: 山形浩生,J・M・ケインズ出版社/メーカー: ポット出版発売日: 2011/11/16メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 272回この商品を含むブログ (11件) を見るビットコインがらみでお金に関する本をいくつか読んで…

ピケティ『21世紀の資本』:せかすから、頑張って急ぐけれど、君たちちゃんと買って読むんだろうねえ……

Note (2014.08.04) What follows are some rants by the Japanese translator of "Capital in the 21st Century." I realized that it can be taken out of context (and that some people actually do such things), so I guess I need to explain what's g…

岩村『貨幣進化論』:進化してないじゃん。

貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム (新潮選書)作者: 岩村充出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/09メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 37回この商品を含むブログ (13件) を見る「ビットコイン騒動で大注目!」なんて帯がついてるけど、これ読ん…