ただの読書
いやあ、特に理由はないんだけど、かなり前からちょっと手をつけていたこんなのを仕上げちゃったので読みたい人は読んで……はいけませんよ。これはあくまで委員会内部の資料ですので。 R.A.ラファティ『アポカリプスいろいろ』より「どこにいってたサンダリオ…
www.youtube.com レイモンド・チャンドラーの改訳、シリーズ化して次は『さよなら、愛しき女よ』を始めました。おー、映画化にはシャーロット・ランプリング様が出ていらしたのね! レイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しき女よ』山形浩生訳 最初の5章と…
前回、オールディスの未訳の大作『ヘリコニア』シリーズの翻訳を、AI翻訳の事例研究としてやってみている話をした。 cruel.hatenablog.com で、一ヶ月ほどで第一部『ヘリコニアの春』が終わった。途中で出張とかも入っていて手がつかなかった時期もあるので…
はじめに そこそこ長いこと棚に並んでいた、カルペンティエールも片づける時期にきた。で、読んだのが晩年の大作『春の祭典』だった。 春の祭典作者:アレホ・カルペンティエール,Carpentier, Alejo,孝敦, 柳原国書刊行会Amazon が、正直、後味の悪い作品だっ…
Executive Summary アンダーソン『チェ・ゲバラ:革命的人生』はすごい伝記ではあるが、1997年の初版から2010年の増補版への改訂で、ゲバラがつかまるときに命乞いをしたという一節がなぜか削除されており、ネット上ではそれが政治的圧力によるのではと勘ぐ…
Executive Summary 2017年に出た、かのチェ・ゲバラの、15才年下の末弟による兄の思い出……は前半だけで後半は自分の話。キューバ革命のときにまだ14才くらいなので、それ以前の兄エルネストについては (ほとんど家にいなかったこともあり) 漠然とした記憶し…
エラン・ヴィタール。ベルクソンもおすすめしてます! 一連の『存在の大いなる連鎖』翻訳を終えたけれど、ラヴジョイ関連のツイートを検索して見てたら、哲学教師が、「ベルクソンとラヴジョイは同じ方向を向いている」という世迷い言を述べているのがあった…
先日からずっと、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の勝手な翻訳とまとめをやっているのはご存じのとおり。 cruel.hatenablog.com 残った一つの章は、とっても大事なんだけれど長いので、仕上がるのはかなり先になるとは思う。が、それとは別の余談。 先日、…
はい、ひまつぶしにラヴジョイの続きですよ。前は天文学だったけれど、今回は生物学です。個人的にはオリバー君の話につながるのが楽しかったが、もうオリバー君なんて知らないよな、みんな。 cruel.hatenablog.com 今回の話はとても簡単。18世紀になって、…
[f:id:wlj-Friday::plain] ゲバラのキューバ戦争記録の邦訳 チェ・ゲバラの本は、同じものがあちこちからいろいろ出て題名も微妙に変わるので、同じものかどうかがわからずいろいろ面倒。以前、『ゲバラ日記』と称して出ているものが8種類もあることについて…
以前、史記の焚書坑儒の話をした。 cruel.hatenablog.com ここでは、焚書坑儒の理由が封禅の儀式をめぐる話と関係があるんだろう、という説を紹介してそれの通りに書いた。でも、その後も史記をちまちま読んでいたんだが、なんか秦の始皇帝のところを読むと…
Executive Summary トマス・ピンチョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書…
先日、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』の1995年あとがきや、新装版への2003年序文を訳した。 訳しても読んだ人は、たぶんぼく自身以外はあまりいないと思う。長ったらしいし、テメーらみんな、度しがたい怠けものだから。が、読んだ人なら (そし…
訳者注:邦訳は、文庫版も1993年に出ており、この後書きは含まれていない。どっかの雑誌のサイード特集や独自編集の雑文集とかで訳されたことがあるかもしれないが、そこまで調べていない。が、あまりに長いので、これが全文そのまま雑誌などで出る可能性は…
Executive Summary カブレラ=インファンテ『煙に巻かれて』(青土社、2006) は、葉巻をめぐる歴史、文学、映画、政治、その他ありとあらゆるエピソードを集め、さらにダジャレにまぶしてもう一度昇華させた楽しい読み物。著者が逃げ出したキューバへの郷愁も…
Executive Summary ゴルバチョフ『ペレストロイカ』(講談社、1987) は、ソ連の体制の刷新と解体から、やがてはソ連そのものの消滅をもたらしたという、当時の世界構造の一大変革につながった図書として、いつか読もうと思いつつ果たせずにいた。いま、35年た…
Executive Summary 司馬遷『史記』に登場する焚書坑儒は、儒者どもが体制批判したせいだとされるが、実は穴に埋められた儒者たちにもそうされる十分な原因があったのかもしれない。かつて儒者を厚遇していた始皇帝だが、封禅の儀式のやりかたに結論を出せず…
Executive Summary 落合淳思『殷』は、落合の甲骨文研究に基づく、殷の社会についての分析で、非常にしっかりしていておもしろい。同時にその殷の研究自体が、直接資料である甲骨文を中心に研究しようとする立場と、後代の創作があまりに多い文献を重視する…
Executive Summary ピーター・ホール『都市と文明 I』は、都市がイノベーションの場だからえらいのだ、という結論ありきの本。第一巻では、高踏文化に見られる創造性がテーマとなっている。しかし冒頭にある創造性の理論のレビューがあまりにショボく、その…
Executive Summary マリータ・ローレンツ『諜報員マリータ』は、カストロの愛人になり、その後殺されかけ、CIAの手先として暗殺作戦に使われて未遂に終わり、その後ケネディ暗殺にも関係していたという、波瀾万丈の女性の自伝。 だが常に股はゆるく、男とす…
Executive Summary マシューズ『フィデル・カストロ』は、キューバ蜂起の泡沫勢力でしかなかったカストロたちをシエラ・マエストラの山の拠点に訪ねて取材し、カストロこそが反バティスタの旗手という宣伝に加担したニューヨーク・タイムズ記者によるカスト…
Executive Summary 宮本『カストロ』(中公新書、1996) は、内容的に公式発表の情報を年表にそってまとめただけ。目新しい視点も分析もないし、キューバ大使だったくせに、カストロ兄弟と直接の接触がまったくなかった模様。しかも記述は1990年代止まり。現代…
Executive Summary コルトマン『カストロ』は、イギリスの外交官が書いたカストロ伝。一応は客観的な書き方になっているが、個人的にカストロと親密だったせいか、きわめて好意的な書き方、というより公式プロパガンダからあまり逸脱しないものとなっている。…
Executive Summary 2021年10月に、ナオミ・ウルフのツイッターアカウントが垢バンをくらった。コロナ陰謀論とワクチン否定論の最も低級な代物をバラマキ続けたせいだが、それ以前からナオミ・ウルフはどんどんおかしくなっていた。 もともと主著『美の陰謀』…
Solved!: How other countries have cracked the world's biggest problems and we can too作者:Wear, AndrewBlack Inc.Amazon Andrew Wear Solved! How other countries have cracked the world’s biggest problems and we can too (2020, Black) 査読 2020…
2020年10月に依頼された、マリアナ・マッツカートの新著の査読。冒頭のコロナでの話とかでもわかるとおり、いまにして思えば (半年しかたっていないのに!) ずいぶん拙速で妥当性のない話になっているように思う。ベトナムなどは社会封鎖は成功したけれど、…
ピケティの新著、翻訳鋭意進めております。その中で古い本がたくさん引用されてて、中にあったのが、コンドルセ。 人間精神進歩史 第1部 (岩波文庫 青 702-2)作者:コンドルセ発売日: 1951/03/05メディア: 文庫 引用ヶ所の邦訳ページを調べなくてはならないの…
Executive Summary お気軽なフォトエッセイ。『地中海』の碩学だがそうした面は軽く触れるだけで、個人的な思いでと文芸的な位置づけ、その文化への憧憬と将来展望を簡単にまとめて、奥深さを持ちつつもさっと流し読みできる。 本文 都市ヴェネツィア―歴史紀…
Crashed: How a Decade of Financial Crises Changed the World (English Edition)作者:Tooze, Adam発売日: 2018/08/07メディア: Kindle版 うーん。 まずは歴史認識の簡単なおさらい。世界が第一次世界大戦前は、金本位制をもとにしたヨーロッパ覇権みたいな…
このたび拙訳で、エドワード・スノーデンの自伝が出ることになった。我ながらものすごい勢いで訳したので、やろうと思えば9月の原書発売と同時発売も可能だったと思うけれど、なんだかんだで11月末になりました。 スノーデン 独白: 消せない記録作者: エドワ…